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防災コラムVol.15

気象情報からリスクを読み解くために

公開月:2006年1月

天気予報を適切に理解し、防災に生かすにはどうしたらよいのだろうか。

国内最大級だった佐呂間町の竜巻

北海道・佐呂間町の竜巻による被害

11月7日の北海道佐呂間町の竜巻は9人が死亡する惨事となった。竜巻の通過した跡は、破壊ともいうべきもので、映像から戦慄を覚えた方もいるのではないかと思う。この竜巻は最大瞬間風速が80メートルを超えた。気象庁が統計を取り始めた1961年以降でもこの強さに相当するものは、この竜巻を含めて3例しかない。さらにこの1年では、2005年12月の羽越本線の突風転覆、今年9月に発生した宮崎市の竜巻などの強風被害が続いている。

そのためか、メディアでは竜巻の予報は可能か、観測機器の増設が必要ではないか、米国のようにトルネードハンターはどうかなど様々な対策がコメントされている。一説として地球温暖化など気候変動まで指摘されている。地球温暖化により近年、顕著な気象の異変が増えているが、それと竜巻との関係は専門家の研究に任せることとして、このコラムでは竜巻の予報の可能性と天気予報の限界について考えてみたい。

天気予報の限界を知ろう

私は気象予報士だが、「天気予報が防災に結びつかなかった」「天気予報に振り回されてしまった」などの意見を聞くと、悔しさを感じるが、天気予報にも限界があることを多くの人に知って欲しいと思う。

それでは、現在の技術で竜巻は予報ができるのだろうか。国内の気象データはアメダス(地域気象観測システム)が、降水量、風向・風速、気温、日照時間を約850カ所(約21km間隔)で自動測定している。それ以外の約450カ所は降水量のみの測定で、測定は10分間隔である。また、テレビの天気予報で使用される現在から6時間後までの雨の様子をマップ化したレーダーアメダス合成画像は、解析雨量・降水短時間予報として利用されるが、その対象範囲の水平解像度は1 kmで、30分ごとの計算である。また、風や気温の予想に使用される数値予報モデルの水平解像度は5kmで、再現できる現象は25 kmとされている。

一方、佐呂間町の竜巻被害は非常に狭い範囲で、短時間の現象だった。幅約100m、長さ500m、継続時間は3~4分と推定されている。そのため現在のシステムやシミュレーションモデルでは竜巻の予報は不可能であり、その存在すら捉えることはできない。事実、佐呂間町のアメダスは風向の変化は捉えているが、風速は秒速8メートルとしか表示されていない。気圧配置から竜巻や突風の可能性は指摘できるが、「いつ」「どこに」といった防災上重要な情報は一切得ることはできない。つまり、防災を目的とした竜巻の予報は現在の技術では不可能なのである。このような天気予報の限界は意外と知られていない。

天気予報を読み解く力をつけよう

竜巻によってがれきは100mも飛ばされた

竜巻と同じように、破滅的な被害をもたらす土砂災害も短時間の狭い範囲での降雨が原因である場合が多い。市役所などの行政機関は平地にあることが多く、山間部と比較して降雨の強度や継続時間はおのずと異なる。「夕立は馬の背を分ける」とは昔からのことわざであるが、夏の対流性の降雨は極めて局地的であることを的確に示した言葉である。このように土砂災害や竜巻などは、シミュレーションモデルの対応できる解像度より小さい気象現象が原因になっていることを念頭に置き、天気予報の限界を考慮しつつ、読み解いていかなければならないのである。

また、気象予報士はテレビなどの天気予報で、科学的な根拠とともに気象現象を解説している。しかし、基本的に災害の発生を予想するものではない。最近は顕著な被害が予想される場合、人々の行動に関して注意事項を述べるようになってきたが、「がけ崩れに注意しましょう」「河川の増水に警戒してください」など一般的な注意事項にとどまることが多い。これは気象庁が発表する情報において、天気予報は都道府県をいくつかに地域に分けたものであり、警報、注意報などの防災気象情報は、例えば多摩西部など、もう少し狭いものの、我々の生活範囲である市や町などの地区単位まで限定できないためである。気象予報士は裏山が崩れるかどうかは教えてくれない。これも天気予報の限界のひとつである。

最後に、気象情報からリスクを読み解くためのポイントを述べておきたい。

  • テレビやラジオなどの天気予報で、台風や低気圧、前線の接近など大まかなリスクを知ることを心がける。
  • 雨が降り始めたら、地元気象台の注意報、警報、土砂災害警戒情報、記録的短時間大雨情報などより詳細なリスク情報をテレビやインターネットから得る。
  • 雨、風、波など、予想される顕著な気象現象に応じて、その地域で予想される災害(土砂災害、高潮、河川の増水など)を考える。また、自治体が発行するハザードマップを見て、危険な地域を事前に知っておく。
  • 解析雨量、レーダーアメダス合成図、アメダスなどを使って、現在、自宅の周辺のリスクや市内でリスクが最も大きい地区などを判断し、今後の変化を予想することにより、防災行動に結びつける。

竜巻や突風など私たちの身の周りには思いもかけない自然災害の危険が潜んでいる。天気予報の限界を知りつつ、提供されている情報を利用して、自ら身を守るための判断をする姿勢が減災に結びつくのではないだろうか。

(監修:レスキューナウ 文:独立行政法人製品評価技術基盤機構 竹田宜人)

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