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防災コラムVol.13

がんばれ!! 地域の消防団

公開月:2006年1月

消防組織の一翼を担い、地域防災の核として活動している消防団。しかし、その人数は年々減り、今や定数割れという危機的状況に。

消防団の活躍で人命が救われる

阪神・淡路大震災では死者約5500人のうち、家屋倒壊による窒息・圧死は約77%を占める。地震発生直後、助かった人の約8割が自力または地域の住民に救助されている。この時に助かった人のほとんどが発生から15分以内に救助されている。その中で消防団の活躍ぶりを示す話のひとつとして、兵庫県淡路市(旧北淡町)富島集落のエピソードがある。集落にある建物の約8割が全半壊という甚大な被害であったが、全ての倒壊建物から生存者を救出し、行方不明者・負傷者を含むすべての確認作業が地震当日の夕方には終了した。その原動力となったのが消防団の活躍であった。

他の地域でもめざましい活躍を見せている。新潟県内を流れる信濃川本支流の堤防が決壊して発生した2004年7月13日の新潟・福島豪雨では15人の死者を出した。しかし、このときも地元の消防団は、決壊前には河川の水位警戒、住民の避難誘導にあたり、決壊後は浸水した家屋から取り残された住民の救助活動を行なった。その後も土地勘を生かし、応援にきた緊急消防援助隊の現地コーディネータ役としても活躍した。

これらに共通するのは、日頃から街に深く溶け込み、日々の活動によって、災害発生時に消防団員が、地域住民の寝ていた位置までも推測でき、この情報をもとに迅速な救助活動を行なうことができたという点である。地域に密着した消防団と地域住民の日頃からの信頼関係が、被害を最小限にくい止める要因となったのである。

消防の始まりは消防団から

消防団の歴史は古く、江戸時代にさかのぼる。江戸時代に入ると街は急激に過密化した。当時の建物は、木造で竹と紙(襖)で建てられており、隣家とも密接していたため、いったん火事が起こると一気に火の手が回ってしまう状況であった。3年に1回は大火、7日に1回はぼやがあった。その中でも江戸の三大大火のひとつである明暦の大火は、天守閣を含む江戸城や多数の大名屋敷、市街地の大半を焼失し、死者は3万人から10万人と記録されている。また、ロンドン大火、ローマ大火と並ぶ世界三大大火の一つに数えられる。これらの状況を打開するため、八代将軍吉宗が大岡越前守に命じ、町火消「いろは四八組」を設置させたことが、今日の消防団のルーツであるといわれている。

日々の活動から

活動の内容は、大きく分けて2種類あり平時(災害の起きていない時)と緊急時(災害が起きている時)に分けられる。平時では火災予防活動・警戒活動・教育訓練活動・機械器具等の点検などがある。緊急時では、火災・風水害・地震・人命救助・避難誘導・救急救助などがある。また、地域によっては水防団・海防団を兼任し、山岳地においては、山岳パトロールや遭難者捜索などを行なう場合もある。地域のお祭りなどで消防団員が交通整理や人員整理などを行なうのは、実は地域の警戒活動の一環である。

時代の流れとともに浮かびあがる課題

消防操法大会(写真提供:東京消防庁本田消防署)

戦後は約200万人いた消防団員も、年々減少し、現在では91万人弱となっている。要因として、消防署員の増加の中で消防団員定数の削減という合理的要因もあるが、消防団員の活動負担が非常に大きいこと、地域社会の変容、地域社会の帰属意識の希薄化、若年層の減少、団員の高齢化などが原因としてあげられる。

団員の職業構成は、かつては自営業者などが中心を占めていたが、現在はサラリーマン団員の割合が増加しており、1968年には3割弱だったのが、2002年には7割弱に達した。このため昼間の消防力の低下が懸念されている。

一方、現在では女性消防団員が増えている。サラリーマン団員の割合の増加や団員数の充足率の低下、常設消防の普及率の向上に伴い、都市部を中心に消防団の役割が火災予防や広報業務にシフトしていることが背景にある。政府は今後、女性消防団員の割合を1割弱まで増加させることを目標としている。

欠かすことのできない消防団

さて、災害はその規模が大きければ大きいほど、被災地にある常設の消防署をはじめとする防災機関自体が被災する可能性があり、災害対応に支障をきたすことも考えられる。災害発生直後、救助・救援活動において迅速に対応を行なったとしても、被災地の消防だけでは、すべてに対応することは不可能である。現在では広域的な救援として、緊急消防援助隊が設置されているが、要請を受けてから現地での活動を開始するまでには時間を要する。だからこそ地域に根付いた消防団が必要になる。

消防団は地域防災の核

防災の要は地域にある。災害の規模によっては、技術や機材だけでなく、人海戦術を取らなければならない場合が多々ある。発災直後の初動期は特に、地域住民同士の助け合い、人命救助や初期消火への努力が被害の軽減につながる。その中で、地域に密着した活動を続けている消防団は地域防災の核といえる。ぜひ消防団の活動に関心を持っていただきたいものである。

(文:レスキューナウ 危機管理情報センター専門員 歌代 翼)

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