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防災コラムVol.10

高齢社会で災害に備える

公開月:2006年1月

これからますます進む高齢社会。災害に備えて何を用意しておいたらよいだろうか。

互助の姿勢で

『平成18年版 高齢社会白書』によると、全人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、2015年に26.0%、2050年には35.7%と、先進国でも類を見ないほどのスピードでその割合が増えることが予想される。こうした状況で、とりわけ重要になってくるのが「互助」の姿勢だ。災害時にまだ公的救援が十分でない時でも、同じ地域の住民が救援活動を行うのが互助だ。これまで発生した災害では高齢者の犠牲者が多い。これからは個人ひとりひとりが、災害時に高齢者へ手を差し伸べる姿勢が今まで以上に求められることになるだろう。

避難するとき

災害が発生し、いざ避難するといっても素早い行動を取ることは高齢者にとって難しいことがある。ましてや、体の不自由な高齢者であれば避難することさえままならない。では、そうならないために私たちができることは何だろうか。今回はすぐに持ち出せるものについて紹介してみたい。

一つの方法としては、ケガ人を運ぶときに用いるストレッチャーを準備しておくことだ。最近では、布製で折りたたみが可能なものがある。また、片方に車輪がつき搬送をより楽にしてくれるものも登場している。こうしたものを個人はもちろんのこと、自治会や町内会などの団体でも準備することができれば、おぶったり、多くの人手を使って搬送せずに済む。

柔らかく、バランスのとれた食事

水やお湯を注ぐだけで食べられるアルファ化米

やっとの思いで避難所に到着しても、高齢者にとっては厳しい環境が待っている。まず食料だが、自治体から支給されるカンパンやクッキーは少し固く感じるかも知れない。非常時には、入れ歯をなくしてしまうことも考えられる。そこであると助かるのがアルファ化米だ。アルファ化米は、湯や水を入れるだけで米を食べることができる。白米のほか、「しそわかめごはん」など種類が豊富。何よりも、湯や水の入れ加減で米を柔らかくすることができるのが魅力的だ。また、厚生労働省の許可を受け、糖尿病患者向けに作られたレトルトタイプの食品を準備しておくのもいいだろう。必要な栄養バランスを崩さず、常に一定のエネルギー量を保持できるよう調理されているので、健康の観点から重宝できそうだ。

高齢者には適さない簡易トイレ

トイレは高齢者にとって切実な問題

避難所生活でよく取り上げられるのがトイレの問題だ。避難所にあるトイレは工事現場で使われている簡易型のもので、段差が大きく高齢者にとっては面倒なだけでなく、危険ですらある。また、大勢の人が利用するため、トイレの中はすぐに汚物であふれてしまう。そこで多くの人は、避難所のトイレを敬遠し、食料や水分の摂取を控え、体調を悪化させてしまう人もいる。特に高齢者の場合、若い人に比べてトイレに行く回数が多く、この問題は切実だ。

それを乗り切る一つのものとして「おむつ」がある。一般的におむつは、紙おむつと尿とりパッドを組み合わせたものが多い。最近では、尿とりパッドの吸収率を上げ、消臭作用が施されているものが多く販売されている。様々な商品が販売されているので、いくつかの商品を組み合わせて使用するのも一つの方法だ。こうした身近なものを使うことで高齢者の尊厳が守られるようにしたい。

季節を想定した備えも重要

避難所では暑さ・寒さの対策も大切だ。気温の寒暖は高齢者の体に大きく影響するからだ。コープこうべ・生協研究機構が、阪神・淡路大震災後に行ったアンケート調査によると、震災後に体調を崩した年齢別の割合が、65~74歳で58.7%、75歳以上では64.4%にものぼった。その要因として、気温の寒暖があると考えられている。阪神・淡路大震災では、避難所に到着するのに時間がかかった高齢者が、後から到着したため寒い玄関付近で避難所生活を余儀なくされたケースが数多くあった。こうした実状を踏まえた上で、暑さや寒さから体を守る術を考える必要がある。

緊急時に持ち出せるものの一つの例として、このような状況下では、かさばる毛布よりもエマージェンシーブランケットとよばれるシートを使うとよいだろう。エマージェンシーブランケットはアルミ製シートで、アルミの色である銀色の特性を活かした製品だ。銀色には熱を反射させる効果がある。消防隊が着ている活動服が銀色になっているのも、火からの熱を反射させるためだ。よって、エマージェンシーブランケットの銀色の面を太陽光に向ければ、太陽からの熱を反射し、暑さ対策になる。一方で、銀色の面を体に巻きつければ、体からの熱を反射して体温の低下を抑えることができ、寒さ対策にもなる。避難所内では、床やダンボールなどの上に敷いて寒さをしのいだり、体に巻き付けるなどして暖かさを確保する方法もあるだろう。

個人、そして団体で心のキャッチボールを

誰しも突然の災害という出来事にショックを受け、心に傷を負いながら被災者の方は避難所生活を送っている。それに加え、高齢者の場合には、周囲とのコミュニケーションを図ることに苦労し、一日中誰とも話さないこともあるという。カウンセラーが避難所へ来ても、見ず知らずのカウンセラーにプライベートなことまで話す気にはなれないそうだ。そうした中、阪神・淡路大震災では、「りんご娘」という女子学生が始めた活動が評判を呼んだ。この活動はりんごを持って避難所へ行き、りんごをむきながら高齢者と世間話をするというものだ。女子学生たちの親しみやすい雰囲気作りが、高齢者たちには心地よく、癒されることが多かったそうだ。もしあなたの高齢の親が被災することがあれば、復興まで共に過ごすなど心休まる環境を作ってあげることも是非考えてほしい。

とはいえ、災害が発生した場合、個人の力だけで互助を行うのには限界がある。やはり自治会や町内会などの集団がより一層、高齢者とコミュニケーションを取って社会全体で助ける姿勢が必要である。また、高齢者自身も普段から防災も含めた地域の行事に参加するなどして、普段から信頼関係を築いておくことが大切だ。そうした行事に顔を出すことで、お互いに知り合いになっておけば、いざというときも、「あそこのおじいちゃんがいないけど、大丈夫だろうか」という早期の気づき、救助へとつながるのではないだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 三澤 裕一)

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