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防災コラムVol.5

災害時の心のケア

公開月:2006年1月

大きなストレスは災害時につきものだが、それに対処する方法とは。

想像以上のストレス

地震などの災害に遭い、これまで体験したこともないような怖い思いをしたときには、人間の心と身体に想像できないほどの大きなストレスがかかる。たとえば恐れや怒り、または無力感、失望感といった感情的な症状が生じる。その結果、集中力や決断力が低下する、無口になるなど考え方や行動にも影響が出る。身体に変調をきたす場合もある。眠れなくなる、ふるえや呼吸困難を起こす、血圧や心拍数が増大する、のどや胸のつかえなどの症状である。

子供の場合には、大人とは違った特有の反応が見られることがある。急によい子になるという過剰適応や、逆に今までできたことができなくなる、親に必要以上に甘えるなど、赤ちゃん返りも起こる。これらは、ストレスに対する子供なりの対処法で、まわりが注意や関心を向けることが必要だというサインとして理解しよう。

異常事態での正常な反応

平成18年7月豪雨で鹿児島県大口市に設置された避難所(レスキューナウ・冨田きよむ特派員撮影)

感じ方、考え方、行動面に現われるさまざまなストレス反応は、決して異常なことではない。災害という異常な事態に対する人間の正常な反応だからだ。また、災害や恐怖の記憶は、長い期間続く。日常生活の中では、心配してくれる人には、何が起きたのかを進んで話そう。睡眠や休息を十分にとるようにし、家族や友人と過ごす時間を持つことである。また、一人で考え、自分の気持ちを整理することにたっぷり時間を使うことも大切である。そして、周りの人には、自分がしてほしいことなどをはっきりと正直に伝えてよい。

このような状態から、立ち直っていく上で、大きな3つの要素がある。一番大切なことは、食事や居場所を確保すること。ちゃんと食事をし、安心して、ぐっすり眠ることのできる居場所を確保しよう。次は、経済的な目処をたてること。当座そして今後にわたって、お金の心配をしなくてもよい状態が必要である。

3つ目はストレスへの対処。人間は、ストレスを受けたときに、自らそれを和らげる力を持っている。それぞれの頭文字をとって「BASIC-Ph」と呼ぶ。

B(Belief・信念)被災体験に意味づけをする
A(Affect・情動)内面の感情を表にだす
S(Social・人とつながる)周りの人との密接なつながり
I(Imagination・想像)音楽や芸術などによる癒し
C(Cognition・現実の認知)現状に対する見通しや打てる手だてを知る
Ph(Physical・身体を動かす)適度な運動や入浴

このような取り組みを行ってもストレス反応が1ヶ月以上続く場合には、地域の保健所などで専門家に相談することを考えてもよいだろう。

ボランティアにも心身のケアが必要

災害時のボランティア活動では、「人の役に立っている」という実感が直接得られやすい。そのため休憩も十分に取らず、長時間活動を続ける人たちが出てくる。ところが、災害という異常時に合わせて活動をし、そのままの状態で帰宅すると、自分自身の心身の疲労に気づかず後になって寝込んだり、活動中に出会った人たちの惨状が突然に想起されるなど、ボランティア自身が心に傷を負うことも起こる。活動直後は一種の興奮状態にあるので見過ごされがちだが、災害がもたらすストレス反応はボランティアにも生じるのだ。

交代による疲労の軽減

長時間のボランティア活動の弊害は、とりわけボランティアセンターの運営にあたるスタッフ・ボランティアから生じやすい。センターの運営の仕方を工夫し、

  • 指揮・調整(渉外・広報・安全管理も含む)
  • 事案処理
  • 情報・作戦
  • 物資・人材(ロジスティクス)管理
  • 資金管理
平成18年7月豪雨で長野県岡谷市に設置されたボランティアセンター

というボランティアセンターが果たすべき基本的な5つの機能については、業務を個人に張り付けにせず、人材がリクルートでき次第に12時間や8時間の交代制で業務を続けられる仕組みにすることで、スタッフの疲労は大幅に軽減される。これは、指揮・調整というトップマネジメントの責任である。交代制は業務を書き残すことで可能になる。交代時間の最初の30分は、各機能の責任者が指揮・調整とミーティングをもち、各セクションが責任時間内に果たすべき達成目標をかかげる。活動終了時には、目標がどこまで行えたのか、計画の遂行の関係者の氏名や連絡先などについて記録を残し続けることで、「この件については○○さんしかわからない」という事態を招かないようにする。スタッフの心のケアの極意はこれにつきる。

ミーティングによるクールダウン

一般ボランティア参加者に対しては、まず当日の全体のオリエンテーションを行い、一日の流れについて見通しをつけてもらった後で、班単位にする。そして班には必ずリーダーをつけ、当日の活動場所、活動内容、活動時間、移動の方法などについて事前にミーティングを行う。活動中もリーダーは、何か注意すべきことが生じていないか気配りを続ける。そして、その日の活動が終了したら、一人ひとりにその日の体験や感想を言葉に出してもらう事後ミーティングを実施する。このミーティングを通じて、「災害時モード」から「平時モード」へとボランティアの気持ちをクールダウンしてもらうのである。また、活動中に心の傷を負ったと思えるボランティアには、じっくりと耳を傾けて体験を聴取し、今後の見通しや対処策について伝えることが重要な仕事になる。

(監修:レスキューナウ 文:同志社大学文学部教授 立木茂雄)

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