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防災コラムVol.2

防災施設を訪ねよう

公開月:2006年1月

楽しい体験を通じて防災対策の糸口を見つけよう

まだ少ない防災対策の実践

日本では様々な災害が毎年のように発生している。昨今、大きな地震が多発していることから、地震に対する備えが注目されている。しかし、大きな揺れによる危険から身を守る策を練っている人は意外と少ない。2006年3月に東京都が発表した「防災に関する世論調査」によれば、「家具などの転倒防止をしている」人は27.1%となっており、3割にも満たない結果となった。また、「具体的な備えをしていない」人は20.7%となっており、自分の身を守る意識付けがなかなか定着していないという現実がある。

池袋防災館の入口

では、なぜ意識付けができないのだろうか。その原因の1つとして、地震が発生したとき、自分の身に何が振りかかるのかをなかなか想像できないことがあげられる。そのため、全国の自治体や消防には、地震のみならず、風水害や火災を疑似体験できる施設が多くある。そうした施設での体験を通じて、防災対策の参考にしてみるのもいいだろう。そこで今回は、東京消防庁が運営している池袋防災館という施設へ行ってみた。

震度7の体験ができる

この部屋では震度7までの揺れを体験できる

東京消防庁が運営する「池袋防災館」には、最大で震度7を体験できる「地震体験コーナー」や、煙に巻かれながら避難する「煙体験コーナー」、そして消火活動を体験できる「消火体験コーナー」などがある。また、事業者や海外から来た観光客向けにも解説できる対応をとっている。

地震体験コーナー

まず、小さな揺れから始まった。すぐさま、頭に座布団を覆い、ガスコンロの火を消した。そして、避難路を確保するために、止め具でドアを開けた状態にし、テーブルの中に潜り込んだ。その瞬間、小さな揺れが突然、大きな横揺れとなり、ガスコンロにあった鍋が目の前にまで転がってきた。実は、2004年に発生した宮城県沖地震や、福岡県西方沖地震では、大きい揺れの中、ガスの火を止めようとして、逆にやけどを負ってしまったケースが数多く報告されているのだ。

また、今回の体験で、テーブルの下に潜り、落下物から身を守ったとしても、鍋が目の前にまで転がってきたことを考えると、なるべく火の元から離れた場所で身の安全の確保を行う必要があるだろう。正直なところ、こうした危険があるとは実際に体験するまで気づかなかった。その他、家具などの転倒防止策を施すとさらに危険性は低くなるのではないだろうか。ちなみに、池袋防災館の中にあるテレビは、壁にしっかりと装着されたロープで固定されている。また、ロッカーにも転倒防止の措置がとられていた。参考にするといいだろう。

煙体験コーナー

火災が発生したとき、一番恐ろしいのが煙だ。2001年に新宿区の歌舞伎町で発生した雑居ビル火災では、煙に含まれる一酸化炭素を吸い込んで、多くの死者が出た。実は、火災で死亡する人の多くが、一酸化炭素を大量に吸い込んでしまっているのだ。それだけに、煙に巻かれないようにすることが、火災から生還するための第一歩だと考えてもよい。続いては、その対処を学習できる煙体験コーナーへ行ってみた。

このコーナーは、人体に無害な煙に巻かれながら、カギのかかっていないドアを開け、迷路のような通路をたどってゴールまで到達するというものだ。まず体験する前に、ハンカチやタオルを準備し、インストラクターから低姿勢で避難するよう話があった。これは、煙には上昇する性質があり、少しでも一酸化炭素を体内に入れないようにするためだ。また、炎があることを想定して、避難する際には、空気の流入によって炎の勢いが増さないよう、開けたドアは必ず閉めるよう指示があった。

オフィスなどでは、防火扉や防火シャッターがその役割を果たしている。実際に迷路のようなコーナーに入ると、周囲は真白な煙で覆われ、視界が悪い状態だ。しかし、目線を床の近くまで落とすと、視界が開けてくる。ところが、姿勢を低くしているため、なかなか素早く身動きが取れない。また、ハンカチを少しでも離すと、煙に付けられている食品添加物の臭いが鼻をついた。いくら低姿勢にして視界が開けたとはいえ、少しでも気が焦ってしまうと、姿勢が高くなったり、ハンカチを口元から離してしまうことが考えられる。「ハンカチは口元に、そして低姿勢で移動する」という基本動作を常に意識することをこの体験から学ぶことができた。

消火体験コーナー

見学者用に準備された訓練用消火器

続いて、消火器を使っての消火体験のコーナーに足を向けてみた。ここでは、水が入った訓練用の消火器を、火が映し出されている大型スクリーンへ噴射し、火を消すというものだ。

火災を発見したらすぐに119番通報をすることは大事だが、実際に火が出てから2~3分の間であれば私たちでも消火することは可能だ。特に地震が発生した場合、揺れが激しいほど消防隊がすぐに駆けつけてくれることは考えにくくなる。そのため、日頃から消火器の使い方を知っておく必要があるのだ。

消火体験をする前に、インストラクターから消火器の使用方法の説明があった。まず、消火器についているピンは消火活動直前に抜くということだ。ごく当たり前のことだが、ピンを予め抜いてしまう人が多いようだ。これでは、消火器を火元まで運ぶ際の振動で、ホースから消火剤などが噴出してしまい、消火活動が全くできない事態になりかねない。

また、消火器1本あたりの噴出時間が約20秒程度しかないことから、効率的な消火方法も教えてもらえる。その方法とは、消火器を持ち上げ、徐々に火へ近づき、ホースを横に大きく振るというものだ。

実際、この方法で大型スクリーンに映し出された火に、消火器から水を噴射させたところ、短い時間ですぐに鎮火した。ただ注意しなければならないのが、消火器の重さが約8キロもあるため、小さい子供に扱わせるのは難しいということだ。小さい子供がいる家庭などでは、火災を発見したらすぐ、周囲にいる大人へ伝える教育が大切だ。

体験だけでなく実践も

池袋防災館のような災害を疑似体験できる施設は全国にある。インターネットで“防災館”と検索すればかなりの数が見つかるだけでなく、自治体の広報誌にも、防災施設の案内が掲載されていることがあるので目を通してもらいたい。そして、実際に出向いて体験をした後に、家族で「もし我が家で発生したらどうなるのか」を話し合い、対策を立ててもらいたい。普段では体験できないことばかりで、特に子供たちにとっては面白く、楽しい体験ができるであろう。しかし、「楽しかった」だけで終わらせることなく、施設で学んだことを通じて、様々な場所での「災害シミュレーション」を行い、防災対策の実践をしていただきたい。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 三澤裕一)

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