明星幼稚園 井上 明美 園長先生
府中駅又は国分寺駅からバスに載って7分、小学校、中・高のある広い敷地内に明星幼稚園はあります。
明後日が運動会ということで、お母さま方が準備のお手伝いに来園されていました。また、子ども達も先生方と一緒に運動会の練習に熱が入っていました。
明星幼稚園のあゆみ
明星学苑は幼稚園から高校までが同じ敷地内にあります。大学だけは日野にありますが、いろいろな世代の人たちと交流を持つことができる、とてもよい環境だと思います。1923年に明星実務学校が設立され、再来年で85周年になります。幼稚園は1949年、昭和24年に開園し、当初は明星学苑の教職員のお子さんを保育するためにつくられました。本当に小規模から始まりまして、今に至るわけです。
年少は3クラス、年中・年長は各4クラスずつあり、現在は231名のお子さんが通っています。
一人ひとりを大切に
私は今年の4月から園長に就任しましたので、園長になって半年の新米です。昨年までは一担任でした。保育者になったのは昭和50年からですので、30年ほどになります。
幼児期というのは、人間形成の基礎になる大切な時期だと思います。家庭から離れ、初めて集団生活に入る子どもたちが、幼稚園の時代を本当に楽しく、ここで過ごしてよかったなと思う気持ちを持って巣立ってほしいと常に願っています。小さい頃に周りから愛された子は、そのまま素直に真っ直ぐ育っていくと思います。基本的なところで、自分が本当に大切にされている、という実感を持てる。そういう環境の中で子供たちを育てたい、というのが私の一番大きな願いです。
「一人ひとりを大切に」それを常に私たち保育者は心掛けています。
自立心のある良い子
明星幼稚園の目標は「自立心のある良い子になる」ということです。具体的には「はい」という返事がしっかりできる子、「ありがとう」の感謝の気持ちが持てる子、「おはよう」の挨拶がきちんとできる子、ということを挙げています。この基本的なしつけを身につけることで、心の器を大きく深く育てていきたいと思っています。
心の中の器がしっかりして、安定した状態であるということは、とても大切なことです。心の中の器が倒れていたり、壊れていたり、逆さになっていたりすると、いくら良い環境の中で良いものを周りから与えられてもそれを受け取ることはできません。ですので、幼稚園では人間教育の基礎作りをするということを大切にしています。
「みなしずか」〜心を落ち着かせて集中してなにかに取り組むこと〜
学苑の特色の1つに「凝念(ぎょうねん)教育」というのがあります。これは創立以来、幼稚園から小学校、中学校、高校と実践しています。幼稚園では「みなしずか」と呼んでいるのですが、どういうことかと言いますと、心を落ち着かせて、物事に集中して取り組む、そういう心の力を養います。幼稚園ではピアノにあわせて歌を歌って、その後、ピアノの伴奏で目をつぶります。これを朝の集まりの時と、お弁当の時と、降園の時に行っています。普段、子ども達は本当にのびのびと遊んで過ごしていますが、逆にこういう静かな時間、静の時間もとても大事だと思います。これは積み重ねでできるようになることだと思いますが、最初の頃は目をつぶりたくないので、子供たちは薄目を開けていたりもしますが、年長さんくらいになるととてもしっかりできるようになります。

「みなしずか」がしっかりとできるようになると同時に、他の人のお話を聞く時の態度もできてきます。このまま明星小学校に行くお子さんもいますが、他の学校へいったお子さんを見た方から「明星の卒園生は姿勢がいい」とか、「お話がきちんと聞ける」とか、そういう評価を得ています。小学校に行ってから急にお勉強だから静かにしなさい、というのは無理だと思いますので、幼稚園の時からの積み重ねが大事です。
「みなしずか」の時間に、心を落ち着かせて集中することで「物事に最後まで諦めないで何事にも一生懸命取り組もうという気持ち」が自然と身についてきます。これはこれから子供たちが成長していく上で、大きな基盤になるものであると思っています。
「遊び」中心の保育
明星幼稚園では、「みなしずか」の「静」とは対照的に、実体験を大切にする「遊び」を保育の中心においています。さまざまな「遊び」を通して、子供たちは自由に考え、行動することを身につけます。自分自身で何かをやろうとする気持ちを尊重し、実際に様々な実体験をすることで、それぞれの自主性を伸ばしていけるように努めています。
その「遊び」の場となるのが、豊かな自然に囲まれた学苑の広い敷地です。
自然に囲まれた園庭
今の園舎は出来て9年目です。それまでは現在の園庭に木造の古い旧園舎がありました。老朽化したのでこちらに建て替え、もとの園舎の場所を園庭として使うようになりました。明星幼稚園では、園内だけではなくて、自然に囲まれた学苑全体を園庭として活動しています。秋になると苑内のお散歩もよくしています。どんぐりを拾ったり、葉っぱを取ったりして自然に親しんでいます。

ここは自然にも恵まれていますので、自然を生かした保育を常に目指しています。1学期には畑に野菜を植えて、収穫したものを子ども達はクッキングしたりします。学年によっていろいろやり方が違いますが、例えば年長さんだったらナス、ピーマンを収穫します。自分達で育てているので、食育ともつながっています。普段、野菜が苦手なお子さんも自分達が育てたということで、食べられるようになります。
今年はバケツの中で稲を育てました。昨年はお米を買ってきて、園庭で煙を出しながらお釜で炊きました。今年は初めて稲からお米を作りました。また園庭にはイチョウの木がありますが、銀杏がかなり落ちてきます。それを拾って煎って食べたり、干し柿を作ったりします。リンゴやミカンもできるので、それを収穫したり自然の恵みをいただいて子供たちは心も体もすくすく育っています。このように明星幼稚園では、豊かな自然環境の中で動植物に触れたり、野菜を栽培・収穫し、そして自分たちで料理をして食べるということを通して、実際の体験をするということを大事にしています。また学苑内の四季の変化を肌で感じることで、思いやりのある、情緒豊かな心をはぐくんでいます。
総合学苑として 〜異年齢交流の場〜
大学は、別の場所にありますが、明星学苑は総合学苑ということで、幼稚園・小学校・中学・高校と様々な年齢の児童・生徒・学生さんと触れ合う機会があります。これが総合学苑の良さであると思います。たまに日野にある大学から学生が来て、子供たちとふれあいの時間を持ったり、お手伝いをしたりしてくれることがあります。高校生が絵本を読み聞かせに来てくれることもありますが、このような機会はお互いにとって、とてもよいことです。子ども達もお兄さん、お姉さんが来てくれると、日常触れ合っている保育者とは、また違った良さを感じているようです。現代は少子化で、中学生、高校生たちも普段は小さい子と接することが少なくなってきているので、このように小さい子と触れあうことはとても良いと思います。最初は異年齢の子供たちということで、なかなかコミュニケーションがとりにくかったり、関係がぎくしゃくしたりもしますが、子供たちが慕ってくるとお兄さん、お姉さんは一緒に遊んであげたりと、自然に思いやりの気持ちができてきます。これはとても大切なことだと思います。
また明星幼稚園では3学年の子どもたちがいますので、異年齢の交流ということを大切にしています。年少さんが入園したての頃に年長さんがお帰りの支度や、お着替えの手伝いに来てくれたりします。お手伝いは4月だけですが、徐々に年少さんも自分でやろうという気持ちが出てきて、年長さんのお手伝いなしに自分たちだけでやれるようになってきます。年長さんはとても面倒見が良く、みんなが集まるホールに行く時も、年少さんの手を引いて連れていったり、歩いて10分くらいの所にお芋掘りに行く時は、年長さんと年少さんが手をつないで行きます。みんなとても仲良しです。
この園では、異年齢の交流をより深めるために、日常的に縦割りで「姉妹クラス」という時間を持っています。縦割りにしたクラスで、一緒にお弁当を食べたり、遊んだりします。定期的ではないですが、そういうことをやっています。運動会でも、普通、開会式で子供たちが並ぶ時は学年ごとで並びますが、ここは姉妹クラス同士が並びます。年長さんが姉妹クラスの名前の看板を持っていたりします。
親子のつながりを大切に…
幼稚園への送り迎えを通して、親子で手をつなぎ四季の移り変わりに心を傾け、子供の言葉にうなずきながら歩く…そんな、一生のうちでわずかしかない素敵な時間を過ごしてほしい、と考えています。これは親と子のコミュニケーションの時間として本当に大事な時間だと思います。
また当園では、特に保育者と保護者のコミュニケーション、保護者と保護者とのコミュニケーションも大切にしています。明星幼稚園では送り迎えの際に、保護者の方に子供たちのお部屋の前まで来ていただいていますので、その日の子どもの様子が生で分かりますし、保育の様子や雰囲気も分かるのでとても良いことだと思います。担任のほうでも「ちょっと気になるな」ということをすぐ保護者に伝えられるし、お母さまのほうでも担任とすぐに話ができる。これはとても大切なことだと思います。
お弁当と給食のバランス
当園ではお弁当の日が多くあります。幼児期の食事は、将来の食生活の基本になるとても大切なものですので、この時期にお母様の愛情のこもったお弁当を食べることは、体だけでなく心の栄養にもなると考えています。ですので、お弁当を持ってきていただくようにお願いしています。また、週1回、お友だちや先生方と給食を一緒に食べる機会も設けています。同じものをみんなで食べることで、好き嫌いが多くなりがちのこの時期に、今まで口にしたことがないものも「他のおともだちも食べているから食べてみようかな」と、いう気持ちも生まれてくると思います。無理して何でも食べられるようにするのではなく、それぞれ子供の状態に合わせて、「味」との出会いを大切にしてあげたいと思っています。
幼稚園に入る前に…
幼稚園に入る前のお子さんを対象に月1回か2回、ひよこクラスというのがあります。園庭を開放し、紙芝居を見たり、何かお楽しみのイベントを用意しています。
今年は4月から10月までのあいだに全部で9回のクラスがありました。水曜日の午後、自由に参加していただいて園庭で自由に遊んでいただいたり、製作コーナー、シャボン玉など、いろいろなコーナーを設けました。
お母さま達も初めてのお子さんだといろいろ不安があると思います。「幼稚園というのが、実際どういうところなんだろう」というのは、来てみないとわからないので、未就園児のクラスに出ていただいて、幼稚園に対する理解を深めていただいています。
保育者としての喜び
この幼稚園を卒園して明星の小学校に行く子供は約3分の1強です。同じ学苑の中なので、担任に会いに来たり、運動会などの行事のときにはよく顔を出してくれます。中学・高校生になると、ちょっと途切れるのですが、それを過ぎて大学生になってから、たまに「覚えてますか?」と遊びに来てくれることがあります。それは何より嬉しいことです。

先日も高校3年生の男の子が来てくれました。野球部の生徒でしたが、突然、私を訪ねてきまして、ユニフォームのまま、大学が推薦で決まったと報告してくれました。正直言って幼稚園時代は結構、手のかかったやんちゃ坊主だったんですが、とても優しい子で中学になり触れ合い活動の時に幼稚園に来てくれると、本当に小さい子に慕われていました。そうやって卒園しても訪ねてくれたり、成長した姿を見せてくれたり、幼稚園の思い出を話してくれたりするのがとても嬉しいです。
今、10クラスありますので教員が10人と私と教務がいますが、今年から新卒で入った2人のうちの1人は幼稚園から明星大学まで、1人は高校まで明星学苑です。しかも昨年は、ここに教育実習に来てくれていました。2人とも幼稚園の時から担任の先生を見てあこがれて、保育者になろうと思ったそうです。今の保護者の方の中にも明星学苑出身という方が結構います。学苑の良さを肌で知って、保育者として戻ってきてくれたり、お子さんを通わせてくださっているというのは、30年間保育者として過ごしてきて何よりもうれしいことです。
Back Number
2007年
2006年
- 12月
國學院大學附属幼稚園 - 11月
明星幼稚園 - 10月
桜美林幼稚園 - 9月
東京文化幼稚園 - 8月
武蔵野大学附属幼稚園 - 7月
日本女子体育大学附属みどり幼稚園 - 6月
日体幼稚園 - 5月
さぎぬま幼稚園 - 4月
成城幼稚園 - 3月
國學院幼稚園 - 2月
桐蔭学園幼稚部 - 1月
昭和女子大学附属昭和幼稚園
2005年
- 12月
田園調布ルーテル幼稚園 - 11月
松沢幼稚園 - 10月
ゆかり文化幼稚園 - 9月
東洋英和女学院大学付属かえで幼稚園 - 8月
宝仙学園幼稚園 - 7月
国立学園附属かたばみ幼稚園 - 6月
若草幼稚園 - 5月
相模女子大学幼稚部 - 4月
光塩女子学院幼稚園 - 3月
サレジオ学院幼稚園 - 2月
和光幼稚園 - 1月
聖ドミニコ学園幼稚園


