成城幼稚園 高嶋邦幸 園長先生
小田急成城学園前駅から徒歩10分、成城大学に隣接する成城幼稚園にお伺いしました。
今年の1月に新園舎が完成し、園長先生に案内されたお部屋もとても新しく綺麗でした。
18年度から3年保育がスタート
18年度の4月より新しく3年保育を始めます。それに合わせて新しい園舎が1月に完成しました。新しい園舎は、四季の自然を感じられるように外と内が隔てられない一体感のあるものです。成城幼稚園の「自然」はだだの植栽ではなく、長い年月によって培われた自然で、太い幹の木々がたくさんあり、あえてあまり手を入れないようにしている園庭には虫などの生き物もたくさんいます。また自然のアップダウンをそのまま残していて、子どもがその中で駆け回れるような環境を与えています。このような環境の中で子ども達は、ともに通うお友達と遊びに没頭しながら、たくさんのことを感じ、学んで、成長していきます。
近くに仙川という川がありますが、3月下旬には川沿いの桜が見事です。学園正門前のポプラ並木などには武蔵野の面影が今なお感じられます。
創立以来の基本精神「四つの綱領」
成城幼稚園は、幼稚園から大学院までを擁する学校法人成城学園の最初の入り口であり、子ども達にとっては、家庭から社会へと巣立つ一歩を踏み出す場でもあります。
成城学園の歴史は、1917年の成城小学校創立に始まります。創立者の澤柳政太郎博士は教育行政家、思想家であり教育界の重鎮でもありました。澤柳氏は、「私立学校は特色をもって生命としなければならないと思う。少なくとも理想的私立学校は特色ある主義方法に基づく教育を施さなければならない」といった信念のもとに理想的な小学校づくりに尽力しました。

澤柳氏が掲げた4つの「希望理想」=建学の基本精神は、「個性尊重の教育」「自然と親しむ教育」「心情の教育」「科学的研究を基とする教育」というものです。その綱領は幼稚園から大学、大学院までを擁する総合学園となった今日でも、全学園に一貫して受け継がれ、実践されています。
初等学校ができて10年後に幼稚園ができましたので、成城幼稚園はあと2年で創立80年になりますし、成城学園は90周年を迎えます。80年前から現在まで基本精神は受け継がれ、幼稚園もそれに準じた形でめざす子ども像を考えています。
今回、園舎を建てるにあたって一番に考えたことは、「教えるための環境」というよりも、「子どもにとってよい環境を与える」ということです。自然環境、住環境それから人的な環境に心を砕いています。それが成城幼稚園のもともとのポリシーでもあります。
自由遊び、一斉活動
実際の保育のありようとしては「自由遊び」と「一斉活動」があります。登園したら、しばらく「自由遊び」の時間です。豊富に揃えてある材料を使って製作をしたり、絵を描いたり、園庭に出て様々に遊びます。すべて自分たちで勝手にというわけではないのですが、ある状況の中で自由に遊びます。それからみんなで一緒に何かをやる一斉活動の時間になります。歌やリズム遊び、ダンス、劇遊び、共同で行う制作などの活動です。伝統行事、季節の活動なども多く取り入れています。
園児の一日の生活の大半は、この二つの大きな枠組みの中でバランスよく構成されています。遊びの中での集団意識、協調性、想像力の発達が人間形成上大きな役割をもっていて、社会生活を営むための基盤になると思います。
年中行事である豆まきなどの古典的、日本的な行事は特に大事だと考えています。成城の幼稚園だから、モダンなイメージをもたれる方も多いかもしれませんが、季節感ということとも関係があります。時の流れはほうっておくとのっぺらぼうに感じられます。それを秩序立て、意識をつけていくのが、行事であり、季節感というものでしょう。それは大事にしていくべきことだと思っています。
総合学園にある「何か」
私は、子どもはそれぞれのペースで、親離れをして、自立していくものだと思います。その過程を学園内各校ですごすことによって「成城らしさ」が自然に身についていきます。
高校ぐらいまでの間にはいくつか進路の選択肢があります。理科系がない学園ですので、高校ぐらいで少し外に出ていきます。また音楽、美術という専門学科もありません。初等学校で美術、音楽に力を入れていますので、そういう道に進む子どもは外に出ていきます。幼稚園は1学年40人ですが、18年度は成城幼稚園卒園者のうち27名が、成城大学に進学します。当然進路は広範囲にひろがっていきますが、共通する雰囲気はあるようです。
徹底した少人数教育の伝統
私達は、慌てる必要はないと考えて、一人一人の成長の段階に応じて対応しています。少数定員制ですので、子ども達の顔や様子、そして心がよく見えます。こんなにのん気でいいのかなと思いながらも、急いだからいいというものではないことも確かだと思っています。私はいろいろな意味で幼稚園としては恵まれていると感じます。他の幼稚園の話を聞くと、今や2歳児保育を考える時代になっているようです。その是非はともかくとして、経営的にそこまで視野に入れないといけない状況があるのだろうと思います。
3年保育は、20名で始めますので、18年度は1クラス増です。何十年も増えもせず、減りもせずという形で、2学年80名でしたが、今年度、全体で100名になります。数年後には3年保育を40名にする予定で、幼稚園全体で120名になります。そして将来は全部3年保育だけで園児を募集することにします。
成城幼稚園から成城学園初等学校へ進学しないケースは、親御さんの転勤などがない限りはほとんどありません。3年保育の20名の内訳は男子10名、女子10名ですが、男女併せて5倍の応募があり、結果的には非常に厳しい受験状況になってしまいました。試験をしなくてよければ我々も気が楽ですけれど、そういうわけにもいきません。
歩ける範囲からの通園が理想
東京都近郊は、教育に関して特殊な場所ではないかと思います。私立の幼稚園に行くということは「地域」から外れることになります。こういう立場にいながらですが、できればお住まいの地域と関わりのある幼稚園に通われるのが理想的だと思っています。
遠くからお受けになる方たちには、「お入りになったらできれば近くに引っ越して、歩ける範囲で通園していただければ」という話はします。もともと近辺の方もけっこうおられますが、実際合格後、この近辺に引っ越して来られる方もいます。初等学校も1時間圏の電車通学のお子さんがたくさんいらっしゃいます。友達と遊ぶとなるとあらかじめ約束をして、相手の家に行き、送られて帰るということになります。私は田舎育ちですので、現代の東京の子どもはある面では気の毒な気がしますし、せめて生活環境の中に遊べる自然があればいいなと思います。
初等学校での音楽教育の経験
私は以前は成城学園初等学校の音楽の教員をしていまして、園長になって3年目になります。すぐお隣ですが、幼稚園のことは案外知らないことも多かったです。
私の初等学校の教員時代の思い出になりますが、初等学校では音楽会を年2回開き、何かしらの形で全クラス、全員が参加します。当然ながら親御さんはそれを見に来たいわけです。講堂の定員は約900人で、人が多過ぎては危険ですので、子どもだけが見る日、家族だけが見る日と分けたのですが、家族だけが見る日は、将来的にはまた講堂が満杯になってしまうのではないかと心配していました。私が幼稚園にきて2年後そのとおりになってしまいました。成城学園の保護者の方々の熱心さには本当に圧倒されます。お父様の参加は前から多かったのですが、最近ではおじいちゃん、おばあちゃん、親せきのおばさんまでいらっしゃいます。今の幼稚園のお母様方を見ていても、お子様にかけるエネルギーはすごいと感じます。
初等学校では子どもが歌ったり、楽器を演奏することが非常にうまく定着しています。
私は音楽を教えていましたが、楽しかったです。子どもは楽しいことは一生懸命やります。そう感じながら幼稚園に来たら、子ども達がもっとピュアなんです。人間って小さい頃は、こんなに純真なものだったんだとつくづく思っています。こちらも心が癒されるようです。
「遊びの時間」「散歩の時間」
初等学校は、相当変わった学校といえます。「遊び」の時間が堂々と時間割にあります。一般の小学校ではせいぜい息抜きの時間ですが、初等学校の場合、積極的に遊びをとらえていますし、「散歩」という時間もあります。低学年はほとんど勉強らしい勉強をしていないように見えます。「私たちはいつになったら勉強するの?」と言うお子さんもいます。五感を全部使って学習することが我々が目指していることなのですが、世の中のいわゆる勉強という概念とはかなり違っているようです。
お子様の自立の方向性と親のサポート
もともと変わった学園だと一般に思われていたようですので、初等学校にしても受験が過熱するような時代でなければ、世の中の主流だったりしたことはあまりありませんでした。しかし最近では受験の相談がありますので、「特殊なことをなさるのではなくて普通の生活を送っていただければ」と申し上げています。ですが親御さんとしては非常に焦るそうです。合格する方法が何かあるだろうと思われるらしいのですが、そんなものはありません。普通の幸せな家庭を築き、子どもはいずれは自立していくんだという方向の中で親子関係を育んでいかれればいいと思います。
自由で開放的な学校に入るために、一時期不自由な受験勉強をしなければいけないというのは矛盾しているとは思いますが、抽選でというわけにもいきません。
入学試験では、お子さんが自立の方向性を持っていて、それを親御さんがどうサポートしておられるのかを見ています。もちろんある時間を輪切りにして見るしかないのですが、お子さんを見ると親御さんも見えてきます。
学園内の結びつきと伝統の力
お子さんが幼稚園から大学院まで行かれると考えると、ご家庭と20年近いお付き合いになるかもしれません。お互いに「20年間付き合うに値する」手応えがほしいことは確かです。90年の伝統を持つ学園の中での幼稚園ですので、「学園内の結びつきと伝統の力」をこれからも大切にしていきたいと思っています。長い年月が熟成した本物の個性尊重の精神を、日々の保育のすみずみにまで行き渡らせて、園児一人一人に活かしていきたいと思います。
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