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国立学園附属かたばみ幼稚園 インタビュー

※この記事は2005年6月2日現在のものです。
2007年4月より、守屋義彦先生が新しく園長に就任されました。

国立学園附属かたばみ幼稚園 神林照道 園長先生

国立駅から徒歩10分、緑が多いところに小学校と幼稚園がありました。今回は国立学園附属かたばみ幼稚園・神林照道園長先生(小学校校長を兼任)にお話をお伺いしました。

公立、国立、私立の小学校を経験

神林照道 園長先生私は私立の学校のほうが公立の学校よりいいというイメージはもっていません。公立の学校から学ぶこともたくさんあると思っています。実は、全国で40万人ぐらいの小学校の教師の中でも私一人だけかもしれないという経歴があります。日本の小学校の形態というのは、大きく分けると公立、国立、私立と3つあります。そして、私立を中学や高校や大学などを併設している学校と、私たちの学校のように小学校までの学校とに分けると4つになります。その4つの形態の小学校を、私は44年間で全部経験しています。ですから、公立の学校の素晴らしさと、国立の附属の素晴らしさ、それからずっとつながっている私立の学校の素晴らしさがわかります。そして私たちの学校にも素晴らしさというか、良さがあるのがわかります。

公立の学校の先生方は、公立だから、どうも十分なことができないとか、公立だから教育委員会などの押しつけが多いと思ったりします。私は新潟大学の教育学部出身で、新潟大学の附属小学校にいたのですが、附属小学校は教育実習生の面倒をみたり、県内の研究の推進をする役目があったりして実際とても忙しいです。また、公立の学校はその学校にどっしりと根をおいて、20年も30年もそこの子ども達と関わるということが、希望してもできません。そういう点はありますが、それぞれの学校の先生が「マイナス思考」で子ども達と関わっているのは一番よくないことだと思います。公立の学校の子どもの良さとか、公立の学校の素晴らしさを自分で見つけて、その見つけたものを自分のエネルギーなり生き甲斐の核にして、子ども達と関わる仕事を続けていくのだと思わないといけないでしょう。

保護者の方の中には、私立の学校のほうが教育理念がきちんとあって、いい学校のようなイメージを持たれている方も多いようです。保護者の方がそのようなイメージを持ってくださるのはありがたいとは思いますが、我々はそう思ってはいけないのです。私立に勤めている教師が、我々は独自の良い教育をしており、公立に比べて素晴らしい教育をしているという思い上がりを持ってしまうのは、良くないでしょう。

国立学園附属かたばみ幼稚園国立(くにたち)には公立の小学校が8つありますが、私はいろいろな小学校に行って、授業を見せてもらうと、きちんとやっている先生が大勢いらっしゃいます。その授業について私たちの学校の教師に伝えます。時間がある時には他の学校に行って、共に学び合いたいのです。同じ日本の子どもを育てているのですから、あまり公立、国立、私立などという壁を作らないで、日本の子どもを育てている仲間と思っていきたいです。そういう、「共に」というのを大事にするべきだと思っています。

公立学校の良さのひとつは、いろいろな家庭環境の子どもがいるということで、これはとても大事なことだと思います。私立の学校だと似たような家庭環境が多いようです。公立の学校と私立の学校ではこういう点が違っている、ということを私はうちの学校の先生たちによく話しています。公立の経験がある先生は、あまりいませんし、この学校しか経験がないという先生が多いからです。

幼稚園に子どもを合わせないで

うちの幼稚園の説明会で私が言うのは、「幼稚園に子どもを合わせないでください。子どもに幼稚園を合わせて下さい。」ということです。子どもに幼稚園を合わせるのだから、我が子がどういう子どもで、どんな輝きを持っていて、こんなところは少し直さなければいけないということを、きちんとお父さん、お母さんが把握していてほしいのです。国立(くにたち)には幼稚園が9つあり、それぞれ特徴がありますから、それをよく調べたり、実際に見たりしてどこが我が子に合っているのか考えてほしいと思います。うちの幼稚園で、私が一番心を痛めているのは、希望した子ども達が全部入れないということです。これはとてもかわいそうなことです。考査の時間は1人のお子さんについて、わずか20数分しかとれませんが、その中で、かけがえのない一人の人間の評価などできません。だから、合格したから優秀な子で、だめだったから、うちの子は力がないなんて思わないでほしいです。

自らの“気づき”を引き出す課題遊び

うちの幼稚園では朝の会・帰りの会、課題遊び、自由遊び、チャレンジタイム、と大きく4つの柱を持っていますが、その中で一番時間を多く取っているのが課題遊びという時間です。20数人の子供たちが共通の課題をもって活動します。例えば舟を作りましょうといったら、それぞれがイメージした舟を作ればいいのです。絵の場合も同じです。実際に保護者の方も保育の様子を見てもらえればわかるのですが、そんなに枠にはめてはいません。課題遊びというのは、先生方がきちっと何年もかかってカリキュラムを作っていて、これを軸にして活動する遊びのことです。共通のテーマの中で、それぞれの子どもが持っているその子らしい発想を出し合います。子ども達どうしが共に関わり合いながら、お互いを高めていこうというのが狙いです。それが私はうちの幼稚園の一番の特徴だと思います。そして一番の核と考えているのが、子ども達に、気づき、考え、行動する子どもになってもらいたいということなのです。教師が見守りながら、子ども達が自ら気づいたり考えたり、そして行動するようなことを、3年間の中でできるところまでやりましょう、というのを目指しています。

船作り バスごっこ

送り迎えと心が届くお弁当

おかあさん手作りのお弁当うちの幼稚園では送り迎えは必ずしてもらっています。送り迎えで、子どもと一緒に来る時に朝の会話ができますし、幼稚園が終わって一緒に家に帰る時にその日のことをいろいろ話すことができます。

そして幼稚園も小学校も給食ではなくお弁当です。お弁当をお昼の時間に開けた時に、子どもは作ってくれた人のことが頭にうかぶでしょう。作った人の心がお弁当の中に込められていて、そのお弁当と関わることによって、作ってくれた人の心に届くでしょう。だから私はお弁当は必要だと思っています。

かたばみ幼稚園の教職員は私以外に11人いますが、私以外の11人は、168人のお母さんと子どもの名前が全員わかります。クラス担任制になっていても自由遊びの時はほかのクラスの子ども達ともかかわりますから全員の名前がわかります。この幼稚園の特徴といえば、そのあたりなのではないでしょうか。

小学校の附属ではない幼稚園

うちの幼稚園は国立学園附属かたばみ幼稚園で、国立学園小学校附属かたばみ幼稚園ではないのです。国立学園の中に、幼稚園と小学校があります。国立学園小学校があって、その附属として幼稚園があるわけではありません。小学校と幼稚園は同じ立場で並んでいるのです。保護者の方には、きちんとこの違いを説明しています。だから幼稚園も小学校に何も遠慮する必要はなく、幼稚園の教育課程を小学校にいわれた通りに組まなければいけないということなどはありません。

小学校の附属の幼稚園ではないですから、国立学園小学校に行かなければならないということはありません。小学校の選択は自由です。単願制度というのがあって、国立学園小学校に進みますという子ども達は全員進学することができます。年長さん60人中毎年50人ぐらいが単願で国立学園小学校への進学を希望されます。11月1日、2日の小学校の入試には参加しないで、9月の1週くらいに、保護者と子どもとの面接をするだけです。だいたい2年ないし3年間のそれぞれの子どもの状況は幼稚園のほうでよくわかるわけですから。

小学校に入学する前のこの時期の子どもの時間は、長い一生の中で1回しかないわけです。その時に受験勉強に時間を使うことなく、年中さん、年長さんの一般的な生活をさせてくださいと保護者の方にはお願いしています。公園に連れていったり、道を散歩したりして、秋を見つけたり、虫を見つけたり、泥だんごを作ったり、そういうのをさせてくださいと言っています。そう言うとかたばみ幼稚園の保護者の方達は、一般応募で来た子ども達についていけるのか心配されます。私は、5年、6年と長い目で見た時には大丈夫ですからと説明しています。

小学校に入学時、一般応募で入った子ども達は約70人、かたばみ幼稚園からは約50人で、それが3つのクラスに分かれます。私が入学時に感じるのは、一般応募で来た子どもは、彼らの頭の中で考える算数などの勉強がしたい、早く字が書いてある本が読みたいし、文字が書きたいと思っているようだということです。ところが、私たちの学校では、最初は学校の生活の決まり、マナー、一緒に生活する時に大切なことはどういうことかだとか、それこそトイレの使い方から全部学習します。その時にはかたばみ幼稚園からの子どものほうが一生懸命に聞きます。それが勉強だと思っていますから。ところが、一般で来た子ども達は、勉強ではないと思っていますから、5月の連休前までの一月くらいの間に、「なんだ、学校の勉強というのはこういうことなのか。」ということで、ばかにしてしまう子が出てきて、実際に教科の学習に入った時にペースを取り戻すのに時間がかかったりします。かたばみ幼稚園からの子どもは何でも勉強、勉強と思っていますから、そのまま素直に学習に入っていけます。

そのあたりを、私はかたばみ幼稚園の年長さんのお母さん達に説明しています。1年生の時にテストで何でも100点を取っても、6年生の時までそんなことが続くわけがないのです。それよりは、1年生の時は10点、2年生の時には20点となっていけばいいのです。受験で、本当に幼稚園の時代に培わなければいけないようなことが、スポイルされているのは、子どもの責任ではないけれども、将来を考えると、どうしてもゆがみが感じられます。先生方には、そういうゆがんだところを直すことから始めましょう、知識を入れ込む必要はありませんから先ずは心を育てましょうと言っています。保護者の方にも、習い事もいいですが、放課後の園庭開放の時には「おかあさん、ちゃんと見守って、友達と遊ばせてください。」と言っています。

子どもが自分のことがわかってきて、将来の夢と希望の漠然とした形が見えた時に、「よし、ぼくはこういう道を行こう」と、本気になれるといいと私は思います。

私立志向、塾、受験

朝の会小さい時から、塾に行って、受験して私立の学校に行っても、子どもがその学校の中でうまくやっていけるとはかぎりません。難関校といわれる学校に入学しても、学力的についていけなくなる子どももいます。辞める子どももいます。親や学校はその時どんな対応ができるでしょうか。ただ勉強を強いるのではなく子どもの考えにきちんと向き合うことができるでしょうか。

私立志向というのを、新聞や雑誌が取り上げたりしますし、中学のほうも定員を確保するために、うちはこういうきめ細かな指導をして、学力アップを図りますなど、宣伝材料をみんな出していますが、私は、そういったことが知らず知らずのうちに、塾を応援することになっていると思います。応援するから塾のほうもいろいろするわけです。塾のクラス分けというのは区別ではなく差別だと私は思います。人間として考えた時に一番大事なのは、区別はしてもいいけれど、差別はしてはいけないということで、それが私の信条です。

私は、国立学園のどんな点がいいですかと聞かれても、他の人から見ると、自分の学校のことをこんな言い方していいのかなと思われるようなことを言いますので、インタビューされるのは実は好きではないのです。もちろん子ども達のことを考えて言っているのですが、自分の学校の子ども達のことだけでなく、もっと広く子どもをとらえています。国立学園小学校はわずか全校で720人、幼稚園を入れても888人です。その子ども達だけで世界ができるわけではないわけです。日本、もっと大きく言えば世界の子ども達がきちっと育たない限りは、うちの子ども達も社会の中できちっと育たないと思っています。ちゃんと世の中を見通せるような人間を育てなければいけないと思っています。ダメなものはダメ、いいことはいいと判断でき、いいことを自分だけでいいと思っているだけでなく、どう広げて自分たちの力にしていくかを考えることができる、そういうやさしさ、たくましさ、かしこさを持った子ども達を育てていきたいのです。

コウイチ少年との思い出、逆現象とは?

長い教員生活の中で思い出はたくさんありますが、今でも「サトウコウイチ」という子どもを乗り越える子はいないと思えるほど印象に残っている子どもとの思い出があります。コウイチ君というのは、長岡の附属小学校で1年生の担任をした時に関わった子どもです。
附属は大学の教授が校長なのですが、入学式で校長先生のお話が30秒くらい経ったころ、みんながシーンとしている時に「あ〜おもしろくない。」と大きな声で言った子がいて、見たら私の組でした。こんな子どもは初めてでした。校長先生は謝りながらも原稿の最後までいこうとしました。それから1分くらいは静かにしていたのですが、ポンと椅子の上に立って、「まだ止めないの?早く止めて。」と、体育館いっぱいに響く声で言ったのです。副校長が、入学式が終わった後すぐ私の所に来て、「いい子がクラスにいるね。あの子がいるということは、とてもいいクラスになるよ。ああいう子は私も初めてだ。あの子と本気で関わってくれよ。絶対あなたが教員生活をしていく上で、立派な教材になる子どもだから。」と。そして「子どもを見る時には、『逆現象』をとらえる努力をしなさい。」と言われました。コウイチ君というのは、普通の目で見るとこういう子どもだけど、そうでないコウイチ君を、いくつ、どこで、どんな時に見つけたか、きちっとメモしておきなさいと。まず、私はすぐに、幼稚園の要録を見たんです。彼は幼稚園を3つかわっていて、どれにも、乱暴、言うことはきかない、友達を殴る、蹴ると書いてありました。私はそうではないコウイチ君が必ずいるはずだと考えました。コウイチ君の逆現象をとらえるためには、彼だけ見ているのではなく、40人の子ども達との関わりを見ないとわかりません。教室からどこかへ出ていったり、とにかく自由奔放。でもそれは、コウイチ君そのもので、逆の現象ではないから、気にしないでいいというわけです。他の子ども達が何か言ってきてもかまわず、コウイチ君には何も指示しませんでした。

4月の中頃、全校草取りに1年生も参加した時に彼が急にいなくなり、しばらくして帰ってきました。右手に何か持っているのですが、かたくなに見せてくれません。私が一生懸命頼んだら、「絶対に叱らない?」「取らない?」と言いました。今までの経験から先生は怒るものだと思っているようでした。指を開いたら、濡れた脱脂綿の中に「やご」を入れて持っていました。「コウイチくん、やごのことをとっても大事にしているね。」と言って、さっき何をしていたのか聞いたら、草取りが終わるまでそのまま持っていると死んでしまうから、保健室の先生の所に行って綿をもらって、自分で水道の所で綿を濡らし、やごを入れて戻ってきたということでした。私は子ども達に「サトウくんがやごを見つけた後、そのままにしないで、綿に入れて持ってきた。」と説明しました。そういう時1年生はいいです。「コウイチくん、やさしい。」と全員が言うのです。いじめられたり叩かれたりしている子も、コウイチ君はやさしい子どもなのだと思ったのでしょう。そんな風に彼がやるとは思いもしないこと、これが「逆現象」。

5月に1年生は遠足に行きました。公園にはチューリップの大きな花壇があり、どの子も花がきれいと言っていましたが、コウイチ君は、「ああ、レンガがきれい。」と言うのです。レンガが幾何学模様になっていました。「どうしてレンガがきれいだと思うのか、説明して」と言ったら、「並びがこんなにきちっとなっているのはきれい。」と言うので、みんなに意見を聞いたら、ここは1年生。「ほんとだ、きれい。」「それでは、さっきコウイチくんに、ばかだとか、変だと言った人は並びなさい。」と言って並ばせ「コウイチくんごめんなさい。」と言ってもらい、1人ずつ、握手をさせました。コウイチ君は、今までそんな風に友達から認められたことはなかったようでした。
1年生の女の子の代わりに正義感から、5年生の男子2人を相手に大げんかをしたこともありました。そんな時も今までの逆現象をつないで考えると、何か理由があってやっているのだろうから、見た現象だけを責めることはできないと思えるようになりました。その後彼は長岡の中学に行き、生徒会会長になりました。高校のときに、東京に来ていた私に手紙をくれ「僕は1年生でただ一人、野球部のレギュラーになりました。今年の甲子園に出場します。」と書いてありました。

いたずらとか、とんでもないことばかりやる子どもを、副校長先生に、「逆現象をとらえて」と言われて以来、コウイチ君を見てきた目でほかの子どもも見ることができるようになったのです。
コウイチ君に出会った後、こちらに来てから教員生活28年になります。先生方が、「子どもが教室に泥だんごを投げました。教室がすごく汚れています。」と言います。でも、「そんなの拭けばいい。子どもに拭かせればいい。いい子がいるね。」という見方ができるようになりました。

いまだに、入学式で「あ〜おもしろくない。まだ続けるの。」とみんなの前で堂々と言える子はいないですね。コウイチ君を越える子どもに出会ったことがないのが、とてもとても残念でたまらないです。

神林園長先生のお話をお伺いして、我が子だけをいい環境に入れれば、いい子に育つであろう、という考えは間違っていて、日本の子どもたちみんなが、いい子に育てば、我が子も一緒にいい子に育っていくことを深く考えることができました。
大変明るい園長先生でした。きっと幼稚園の子どもたちも明るく育っていることでしょう。
最後に三浦友和さん・山口百恵さんご夫妻のお子さん達もこの幼稚園の卒園と教えていただきました。

2005年6月2日(木)国立学園附属かたばみ幼稚園にて

国立学園附属かたばみ幼稚園 HP
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