カリタス幼稚園 菅原けい子 園長先生
JR南武線の中野島駅近くの閑静な住宅街にカリタス幼稚園から高等学校までがあります。幼稚園舎入り口には優しそうなマリア様の像がありました。
今月はカリタス幼稚園 菅原けい子園長先生にインタビューをお願いしました。
新しい幼稚園教育
私がカリタス幼稚園に赴任したときは、平成元年に改訂された新教育要領が示された数年後でした。以前から管理的教育、小学校就学前の準備としての幼稚園教育には疑問を持っていましたので、幼児の主体的活動が重視され、環境から学ぶという新しい幼児教育の指針は間違っていないと思いました。
この新しい教育は自由保育、それまでの教育を一斉保育という言い方で全国的に浸透していました。そして文字や数など小学校で勉強するものは幼稚園の中では殆ど見られなくなっていました。
そのころ、小学生のクラス崩壊という現象が社会問題となり、これは幼児期の自由保育が起因するのではないかとマスコミ等で取り上げられることがありました。しかし新指導要領の指針であるところの個の自由の尊重は勝手気ままに放任するという意味ではなく、幼児期は周りの全ての環境を通して幼児自身が学ぶことが大切であり、周囲の大人が教え込んだり、レールの上に乗せて形作る教育であってはいけないと言っているのだと思います。
モンテッソーリ教育の自由
私どもの幼稚園もちょうど模索している時期でした。新しい保育観、新しい子供観を真剣に考え直さなければならない時だったのです。そこで出会ったのが多くのカトリック幼稚園で行われているモンテッソーリ教育でした。
今までの幼稚園のイメージは、先生は太陽のように子ども達の中心となって、子ども達は先生と一緒に動くというものでしたが、モンテッソーリ園では全く逆で、保育者は静かに子どもの側にいて、個々をジッと観察しながら必要なときに必要な援助をするというのが基本です。個々の子どもの成長の過程にある興味や好奇心を軸に、自分自身で追求したり発展させたりして自分で満足する過程を大切にするための手伝いをするというのが教師の姿勢です。
カリタス幼稚園では4年前より試験的にモンテッソーリ教育を導入して参りました。モンテッソーリ活動には実に様々な教具や教材があります。3歳児は切ったり、貼ったり、編んだり、洗濯をしたり、手の指を1本1本丁寧に洗ったり、箸やスプーンを使ったりする活動が大好きです。
少し大きくなると細かいビーズで可愛いものを作ったり、文字を書くことに夢中になったりします。ワイングラスに水を入れ、中のきれいなビーズの玉をスプーンで隣のワイングラスに空け移す活動が子ども達は大好きですが、全て本物を使います。乱暴にあつかったり、よそ見をして運ぶと落ちて壊れます。ですから自然に気をつけて扱うようになります。危ないから包丁やハサミはだめと使わせてもらえなかったものが、幼稚園では使えます。
子どもは大人がやっているものをやってみたいと思っています。丁寧にやり方を見せてあげれば自分一人で一生懸命やります。お母さんに本をたくさん読んでいただいた子どもは字に興味を持つのが早く、あっという間に文字を覚えます。
なんでも「一番」にこだわる時期が子どもにはありますが、その時に数を教えてあげると、すぐに数の概念を理解してしまいます。
こういった一人ひとりの興味と成長を見るのはとても楽しくわくわくしてします。ふさわしい教材と環境があれば自由に選び、工夫したり出来たりすることで満足し、自分に自信を持つようです。そして自由には責任が付随する事も自然に学んでいきます。ですから子ども達の自由な意志でする選択を最も尊重しています。これはモンテッソーリ活動の時だけではなくあらゆる場面で尊重されなければならないことだと思います。
多くの子ども達は小さいときから「あれはだめ」「これはだめ」「こうしなさい」「これでは失敗する」といわれ、自分で決めたり自分で責任を持って行動することが少ないように感じています。ですから自信がなく、自己肯定観が育ちにくいのです。
17年度よりモンテッソーリ園として出発
17年度より3・4・5歳児の縦割りクラス編成になります。同年齢の横割りクラスでは比較、競争といったネガティブな部分が目立つことも多いのですが、異年齢集団というのは自然な社会の仕組みですし、兄弟の少ない現代の子ども達にとってはよい環境ではないでしょうか。
実際、保護者の方や新入園を希望される家庭からも「一人っ子なので下の子を思いやる気持ちが育って嬉しいです」「お姉ちゃんが一緒にいて教えてくれるから安心です。大きくなったら自分も下の子を面倒見るのだという気持ちが育ちます」といったご意見をたくだん頂いております。
現在はまだ横割りですのでそれほどたくさんのモンテッソーリ教具を各クラスに置いていませんが、縦割りになることで大きい子ども達がやっている活動を見て、興味を持つ範囲がぐんと広がり、もっと楽しい時間になると思います。
モンテッソーリ教育は英才教育ではないかと言われることがありますが、私たちはそうとは思っていません。何かが出来るためにするのではなく、子ども達の精神的な成長を1番のねらいとしています。
先ほど申し上げたように自分で選び、集中する。間違いを自分で発見し、工夫したり訂正したりして解決し自分のものとした時、大きな自信となります。自立するのです。私を始め皆学校に通い勉強し、研修をして参りました。モンテッソーリ教育を知って新しい保育観、子供観の共通意識が持てたことがとても嬉しいことです。
子供自身が学ぼうとする力、育つ力を持っていると信じています。私たちはただそれをお手伝いするだけだと考えています。
カリタス幼稚園のモットー「愛の中で自由に大きく」
創立当初からのモットーです。「愛」は個々の個性を認める。具体的には個々の成長のあり方を受け入れることにあります。一人ひとりが大切な存在であることを子ども自身に感じて欲しいと願っています。「自由」は、勝手気ままな自由ではなく精神的な自由を意味しています。大人の顔色を見て気遣うことや、親が望んでいるから、先生が怒るからこうしようではなく、自分の自由な気持ちがいつでもどこでも素直に出せる解放された気持ちをもって欲しいということです。精神的に解放されたとき子どもは初めて大きく成長します。私はモンテッソーリ教育を通して「自由に大きく」のモットーが本当に生かされていくと感じています。
子どもの生活の中では静と動、そして個と集団の時間が大切にされなければならないと思います。子どもは常に動き回って騒いでいるというのは間違いです。落ち着いて本を読んだり、集中して何かをする時間があるのはとても大切なことです。そして肉体的には成長期の子どもは外で思いきり体を動かして遊んだり、どろんこになったり、自然をたくさん感じたりすることがとても大切なことです。
園庭で走り回る子ども達は実にのびのびとして輝いていますね。そして個の自立を目指さなければなりません。自分を受け入れることが出来た子どもは他者との関係もよくできます。一緒に協力したり、自分の思いを言い合ったり、競争したりすることでたくさんのことを学びますから幼稚園での子ども同士の関係は社会生活の一歩です。こういった幼稚園生活の全てが子ども達にとって満たされたものでなければいけないと考えています。
おうちの方には「たくさん愛されて育った子どもは、他の人にも優しく仲良くできます」と話しています。自己肯定観があるからです。先ずご両親からお子様を認めしっかり受け入れて欲しいですね。私はカリタス幼稚園のモットー「愛の中で自由に大きく」という言葉が大好きです。言葉だけで終わらせてはいけないと強く思っています。
ケベック・カリタス修道女会 聖マルグリット・デュービル
カリタス学園はカナダのケベック・カリタス修道女会によって設立されました。聖マルグリット・デュービルは200年前の人ですが貧しく弱い人々のために奉仕する一生を送りました。カリタス修道女会の創立者です。
カリタス学園は弱く小さい人々のために力を尽くすことのできる子女の育成を目的として作られた学園です。キリスト教は、人間はみな神様の大事な子どもであり、皆平等で大切にされなければならないという人間観を持っています。
ですから子ども達には「イエス様は、弱い人も、貧しい人もみんな神様の大事な子だから、お互いに助け合おうねと教えてくださるためにお生まれになったのよ」と繰り返し伝えています。
苦しんだり困ったり悲しんだりしている人がいたら出来るだけ力をかせる人になることと、全ての人々が差別されることなく、みんな平等で幸せになる権利があって、生まれた価値があるということを伝えていくことが、カリタス学園に勤める私たちの使命だと考えています。
また、月1度の誕生会にはその月のお子さまの保護者の方たちにも参加していただいています。その後私とお母様方と意見交換をする機会を持っています。モンテッソーリ教具を紹介したり、行事や活動についてお話ししたり、その時社会で話題になっていることなども話題に出ることがありとても有意義な時間になっています。学園の理念、現在行ってる教育活動などもっとよく理解していただくことが目的ですが、保護者からの感想やご意見をいただくことで保育や行事の中に活かすことが出来、お互いにより信頼関係を深めることができます。一人の子どものよりよい成長のためには家庭と幼稚園が手を結ぶことがとても大切だと思います。聖マルグリット・デュービルの人を大切にする心が、この学園に集まる皆様に伝わり、更に広がっていってくれることを願っています。
印象に残っていること
私は、約10年子育てで家庭にいまして、その前後約10年ずつつ、合計20年カリタス小学校で教鞭をとり、その後この幼稚園に参りました。
高学年ばかりを担任しておりました私にとって、幼い子どもに戸惑うと共にはじめはただ可愛らしくて抱き上げることしかできませんでした。どの子にもたくさんの思い出がありますが、大きな成長を感じさせてくれた子どもには特に強い印象を持っています。
気が強くて倦厭されていた女の子があることをきっかけにみんなから認められ拍手を持って受け入れられた経験をしました。そのお子さんはその日からガラリと変わりましたね。顔つきもやわらかくなり、お母様まで優しいお顔になりました。
また保護者の中には卒業生もたくさんいて、私が担任したお子さんがお母さん、お父さんになってお子さんを入園させてくださっています。その園児のおじいちゃまやおばあちゃまにお会いするのがとても嬉しく、ついつい話がはずんでしまいます。
私が幼稚園に来て2年近くお互いに気がつかなかったことがありました。初めて小学校に勤めた時のクラスのお子さんで、私は1生生の担任でした。ひょっとしたことから分かり声をかけたところ、その方のお母様が駆けつけてくださり、懐かしく楽しい再会が出来ました。これからも学園を通してたくさんの人と人との関わりが続いていくと思います。とても嬉しいことですね。
モンテッソーリ教育を実践されているということをお伺いして、教室のいろいろなお道具を見せていただきました。工夫された積み木や、リボン、色画用紙等、色彩豊かなものを子どもたちは喜んで使って遊んでいるそうです。
今年のカリタス幼稚園の、入園テストについてお伺いしてみました。(まえ組版模擬入試試験ページへ)
菅原先生ありがとうございました。
2004年11月17日(水)カリタス幼稚園にて
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