森村学園幼稚園 山本八郎 園長先生
駅から学校に向かって歩いていますと、1年生でしょうか制服の金色のボタンを眩しく光からせながら楽しそうにお友達と下校していました。閑静な住宅街の中の大きな敷地にありました。今回は森村学園幼稚園の山本八郎園長先生をお尋ねしました。
森村イズム
森村学園では、幼稚園から初等部、中等部・高等部と進学していくお子さんが多いので、幼稚園では、学園の最初のスタートに立って、「森村」のことを理解していただき、幼児が育っていく上での豊かな環境を整えるよう努力しています。
私は、幼稚園長になってまだ2年半という時間しか経ていませんが、それまでは中等部・高等部の教員として勤務し、そのうち最後の6年間は教頭を務めました。
中等部・高等部を担当していました時は、幼稚園でどのようなことをしているかわかりませんでした。初等部ではどうなのだろうと、幼稚園や初等部の教育内容がはっきりした形で見えていませんでした。森村での出口を預かるものとして、最低限ここまでのことはできるようにしておいて欲しいという、幼児や初等教育に関しての要求や期待ばかりが強かったと思います。
しかし、幼稚園長を仰せつかってからは、進級・進学するにつれて、これだけのことが必要になってくるのだから、幼稚園では人として育つ基礎作りをしっかりしようと心しています。もちろん幼児を相手にすることですから、難しい勉強ではなく、習慣として身につくあいさつや、集団行動の大切さなどです。初等部に進学した時に幼稚園でまいた種が芽を出し、中・高等部でさらに花を咲かせることができたらと願いながら、“積み重ねていく教育”を大切にしています。森村学園は大学がありませんので、子どもたちは、いずれは高等部を卒業し独り立ちしなければなりません。
大学に進学した時、そして社会に出た時に、幼い頃から培った“森村っ子”としての誇りや伝統が卒業生にとって何よりの宝物となるようにしたい。これが学園のモットーです。
学園でずっと末永くお友達としてお付き合いする場合もありますが、幼稚園から初等部の段階または、初等部から中等部・高等部の段階で親御さんの目で子どもを見ていただいて、環境を変えていくのも必要な場合も時にはありますと、保護者の皆さんにお話することもあります。
末永いおつき合いは、ともすると閉鎖的になりがちですが、初等部で約65名、中等部でも約90名外部募集で増えていきます。森村イズムとしては徐々に生徒たちが増えていき子どもたちの友達の輪が広がっていきます。
大所帯になっていく中で、人間関係も幅のあるものになっていきます。
正直、親切、勤勉
森村学園幼稚園はみんなと楽しく遊んで、豊かな自然に親しみ、体を鍛え、集団生活の中でお友だちを思いやる心を大切にしています。人間としての根っこの部分をしっかり作るという土台作りをしています。
いわゆる勉強に関しては、初等部からです。
また、すこしでも、子どもたちが、広い世界を見渡せるような努力も学園がひとつになって行っています。その一貫として、今年から中等部では、イギリスの修学旅行を実施しています。世界を知る上で大切なのは自己照射の目です。
高等部では、日本の文化を知るプログラムが修学旅行などに組み込まれます。そして己を見つめ直して、大学、社会へと巣立っていきます。
森村学園の創立者・森村市左衛門が掲げたことは、
「世の中のためになるような人を作り上げよう」。
「正直、親切、勤勉」です。
幼稚園、初等部の子どもたちには分かりやすいものですが、成長するにしたがって、いかにその実践が困難であり、重要であるかを実感できるようになっています。“形にない”森村の財産ともいえるこの校訓は人間としての気高さを養うものです。
「正直」はご家庭でかなり協力していただかないといけませんし、「親切」に関しては社会的にみんなで助け合って実践できることです。「勤勉」は学校に頼る面が多いと思います。この3つは、家庭と学校が心をひとつにして、生活のあらゆる場面で実践していかなければ実現できないものです。
毎日の経験で成長します
特に3歳の子どもたちにとっては、毎日、毎日のできごとが初めてのことです。式典行事、あそび、保護者の皆様のご協力でできる行事等、毎日が新しい体験です。子どもたちは、ひとつひとつの行事で成長していきます。
実際、保護者の方や新入園を希望される家庭からも「一人っ子なので下の子を思いやる気持ちが育って嬉しいです」「お姉ちゃんが一緒にいて教えてくれるから安心です。大きくなったら自分も下の子を面倒見るのだという気持ちが育ちます」といったご意見をたくだん頂いております。
4月 入学式、たけのこ掘り(年長)
5月 遠足
6月 保護者保育参加日
7月 たなばたの集い、林間保育(箱根)(年長)
8月 夏休み
9月 学園バザー、遠足、お月見の集い
10月 親子レクエーション、おいもほり、縦割り週間
12月 クリスマス会、冬休み
1月 おもちつき
2月 まめまき、作品展
3月 ひなまつりの集い、卒園式
ほかに毎月、お誕生会
日々の経験の積み重ねが子どもたちを大きくします。あらゆる場面で、子どもたちの力強さを感じますが、大人もそれに負けず、しっかり見守っていく事が大事だと思います。
10月の第4週は、縦割り週間で異年齢の年長も年少も一緒になって活動します。6つの班に分かれて、「おすし屋さん」や「基地作り」等、テーマは先生と一緒に子どもたちが考えて楽しみます。年長の子どもたちが普段と違った一面を見せてくれます。
たまごやきの会
お子さんの保育中、ご希望の保護者の皆様に、学期に数回、育児についてのテーマを揚げて、講演やこん談会を開催しています。身近な話題ということで、会の名前が“たまごやき”という暖かい名になりました。また、「すぎの子」というPTA誌を学期に1回発行するなど、保護者の皆様のご協力のもと、多彩なPTA活動も展開中です。
森村学園幼稚園は、送迎バスや給食そして制服もありません。
すべてご家庭の協力が、子どもたちの生活に、とても大切です。
印象に残っていること
今いる幼稚園の年少の子どもたちは、14年経つと、高校3年生になります。
幼稚園の子どもたちはとてもかわいくて、高校生に比べると、手も足も一つ一つがとても小さく、日々の成長が目に見えてきます。
幼稚園長になった年にどうも見覚えのある保護者がいると思っていましたら、やはり私の教え子でした。
卒業生をたくさん出してきましたので、鮭が川に戻ってくるように、自分の受けた教育を子どもにも受けさせたいと卒業生が思ってくれているのでしょうか。戻ってきてくれるのは、森村で育ったことへの社会人としての評価だと思います。自分の学んだ学校で、自分の子どもを学ばせたいということが、学園のファンを作っていく根幹のような気がします。
私は数学の教師でした。
卒業生も大きくなって会社の要職や自営業につき、早くに卒業した世代は40代なかばになりました。それぞれの子どもたちも手が離れ、逆に自分の御両親の面倒を見る立場になってきました。今は子弟というよりは、同じ社会にいる保護者同士のような、先生、生徒といった仕切りを取り外した関係になっています。一緒に会って話したり、食事に行く機会も多くなりました。現代風の親の気持ちがわかってくるところもあり、子どもたちにこのように関わった方がいいのでは、といった話もできます。実際の高校生よりも、親になった卒業生との関わりが多くなってきました。
創立者 森村市左衛門
2004年は横浜150周年開港記念の年です。森村学園の創立者森村市左衛門は実業家で、いち早く横浜からアメリカに貿易を始めました。
私立の学校には、バックボーンとなるものがあります。森村学園の場合、”Noritake”、”TOTO”、”日本ガイシ”等、主に陶器の会社ですが、「森村グループ」が支援してくれています。
創立者 森村市左衛門は、人材育成にも深く関心を持ち、福澤諭吉先生の慶應大学や早稲田大学の後援活動も積極的に実施しました。北里研究所に対しても、資金を提供しました。また、女子教育にも熱心で、日本女子大学の設立にも貢献しています。市左衛門の弟である森村豊の「豊」という文字と息子の森村明六の「明」の字をとって命名した日本女子大学附属豊明小学校、豊明幼稚園は、今もなお有名な学校として健在です。
晩年に自分の庭に森村学園幼稚園と初等部を開校しました。教育界に残した足跡も大きく、設立から90年を越えた今も、創立者の曾孫にあたる森村登代子先生が筆頭になって伝統を守っています。
インタビューを終えて、会社に戻り、早速、慶応大学、日本女子大学のホームページを調べてみました。確かに森村市左衛門さんのお名前や豊・明のお名前が各大学歴史のページの中にあり、明治時代からの深い歴史のつながりを感じました。
山本園長先生、ありがとうございました。
2004年10月18日(月)森村学園幼稚園にて
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