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玉川学園幼稚部 インタビュー

玉川学園幼稚部 櫻井利昭 部長先生

豊かな自然に囲まれたキャンパス、こんもりした森の中を少し歩きますと、明るい雰囲気の幼稚園では元気に園児たちが遊んでいました。今回は75年の伝統をもつ玉川学園幼稚部にお伺いしました。

幼児教育は人生の土台作りです

私は、平成14年からここ幼稚部に参りました。それ以前は、24年間小学部におりまして、幼稚園の子供たちを引き受ける1年生の担任を、教員生活の約半分担当しました。

櫻井利昭 部長先生義務教育のスタートにあたっては、当然それまでの教育暦を考慮して教育にあたります。しかし、その時にわかったようなつもりでいたことが、幼稚園に来ると、ここからスタートしたのだなと、子供たちの成長をより深く知ることができます。

一つの例ですが、幼児期は、「正しいこと」=「お互いに快いこと」を学んでいく時期です。友達と遊ぶ経験を通して、それぞれ主張すべきところは主張し、譲るべきところは譲り、それによってのみお互いに「快さ」を感じることができることを学びます。それができていると、小学校からの、友達と何かの課題を解決しより良い実践をして行くという活動が成り立ちます。

週1度の礼拝の中で聖書の話をしますが、その中にある「岩の上に建てた家」のたとえ話のように、しっかりとした「岩=土台」を作り上げて行く時期の大切さを日々感じています。

私たちの学校は一貫教育です。

この幼稚園を選んでくださるご父母は、幼稚園だけを選ばれているのではないと思っています。当然小学校をお考えになっているし、中学、高校も考えていらっしゃる。玉川学園の一貫教育を選んでくださっていると思っています。

誕生会の和太鼓同じ敷地にありながら難しい部分もないわけではありませんが、幼稚園児たちが「あんな風になりたい」と思えるような機会を設けています。

各月のお誕生会では、小学生、中学生、高校生、大学生のお兄さん、お姉さんがいろいろなパフォーマンスを披露してくれます。全日本学生チャンピオンの演技や、NBAのハーフタイムショーで披露した和太鼓の演奏、高校吹奏楽日本一の演奏、中学部のハンドベルの演奏、小学部の旗体操など、園児たちも毎月楽しみにしています。

日々の生活の中では、特に小学生(低学年)との交流も継続的に行っています。さらによりよいものを目指しています。私のように小学部から幼稚部へ、といった教員の交流も教育の連続性、連携を実施していく上では重要なことですから、システムとして考えられています。

幼稚園から小中高、大学へと、どの学部の教員も子供たちの成長に関心を持っています。

幼稚部の子供たちが100%玉川大学に行くとは限らないですが、幼稚園からの15年間、大学を含めると19年間の子どもの成長の姿を目にすることがあります。その子の成長について、最後の出口を担当したゼミの先生と情報交換することもあります。

この3月に、こんなことがありました。

私が小学校6年で受け持った子が大学を卒業しました。その子のゼミ担当の大学教員と「あの子は6年のときこうでしたよ」と道端で話していると、そこに、その子の小学校1年生の担任がたまたま通りがかりました。「あの子こうなのだよ」とひとしきり3人で盛り上がりました。こうしたことは、一貫校として大切にしていかないといけないことの一つです。学園には、みんなで育てている雰囲気があります。

多くの子ども達は小さいときから「あれはだめ」「これはだめ」「こうしなさい」「これでは失敗する」といわれ、自分で決めたり自分で責任を持って行動することが少ないように感じています。ですから自信がなく、自己肯定観が育ちにくいのです。

玉川学園としては、もっともっと本気で本物の一貫教育を目指しています。

平成18年度から6-3-3制の区切りではなく、幼・小・中・高の途切れることのない連続性・一貫性をもった学園がスタートします。21世紀の教育を考えた教育プロジェクトの一つです。

ご父母と先生が一緒になって子供たちを育てていきます。

子供が一所懸命になっていることに親も同じ方向を見ていることはとても大切なことです。私たちもご父母も、同じ方向を見て、子供たちを今めざしているよい方向に導いていかなくてはなりません。毎日のお弁当や送り迎えに加えて、日常の教育活動に是非参加していただきたいと思っています。

ガーデニング今日は、ご父母が花を植えてくれる日になっています。たくさんのご父母が来ておられるのですが、このように父母会が企画して教育環境の整備を担当してくださいます。花を植えたことが親子の話題になるでしょう。「お母さんが植えた」花が、明日からの幼稚園の生活の中で大切なものになることはまちがいありません。

1年に1度、ご父母が先生と同じ役目をする日を設定してあります。

その子が一番いい状況であるときや、課題をまさに乗り越えようとしているときに来ていただきます。その子も、その日は「ママ」と呼ばないで「○○先生」とお母さんのことを呼びます。お母さんにべったりということもありますが、その場合もその気持ちを突き放そうとしていくか、もう少し時間を取っていこうか、お母さんと一緒に考えていきます。

確かな数字ではありませんが、ほぼ6割のお子さんが、入園時は一人っ子です。

先ほど申し上げたように自分で選び、集中する。間違いを自分で発見し、工夫したり訂正したりして解決し自分のものとした時、大きな自信となります。自立するのです。私を始め皆学校に通い勉強し、研修をして参りました。モンテッソーリ教育を知って新しい保育観、子供観の共通意識が持てたことがとても嬉しいことです。

ご父母による1日先生子供自身が学ぼうとする力、育つ力を持っていると信じています。私たちはただそれをお手伝いするだけだと考えています。

幼稚園は子供たちのデビューとともにお母さんのデビューでもあります。子供たちは新入園児としてしっかりとしたケアの中でガイダンスをしています。お母さんも「tamagawa adventure program」という玉川学園のプログラムに参加していただいています

どうしても、幼稚園のお付き合いになりますと「○○ちゃんのお母さん、お父さん」と呼び合ってしまいますが、「○○さん」というように子供のお母さん、お父さんとしてではなく、ひとりの人として固有名詞で呼び合える仲間作りのきっかけをつくり、ここから子育ての相談ができるような、父母同士のコミュニケーション能力を高めています。

お母さん方から「うちの子供は、お友達ができましたでしょうか」といった質問をよく受けますが、お母さん自身、新しいお友達ができましたか、とお伺いしてみます。「私はいいのです」とおっしゃることもありますが、新しい社会に入って新しい仲間作りを親も経験していかなければ、子供も仲間作りはできません。

このようなことをお話しながら、お子さんと一緒に育っていく機会を設けています。

お父さんの会「親父の会」お父さんの会「親父の会」の参加もあります。遊具のペンキ塗りをお手伝いいただいたり、花壇を作っていただいたりしています。「赤い自転車はお父さんが塗ったのだよ」といった会話がご家庭で弾むようになります

クリスマスの賛美歌をお父さん達で歌ってみましょう、と企画しましたら、平日の夜7時からの練習にもかかわらず約40名のお父さん方が集まってくださいました。都心の会社から一度幼稚部にこられて、都心のご自宅にお帰りになるお父さんもいらっしゃいました。

こうしたことを通して、子供が安心して通っている幼稚園のことをご父母としてもわかっていただく環境作りをしています。

教育界も改革が叫ばれています。「ここまででよい」と思っていたことが「最低限ここまで」に変わったりして、混乱している状況もあります。私たちは75年前のスタート時点からそれほど、右往左往することなくやってきました。創立当初から「親と子と先生」との共育を進めてきました。私たちの考え方は、小さい子供は、白紙のようなものでその白紙に何か書き込んでいくことでも粘土細工のように形を作ってしまって、この子はこういう形ですよとすることでもありません。ご父母も私たちも一緒に、子どもたち自身が進むべき道を見つけて行かれるように援助して行くことが大事なのです。幼稚園の教育は預けましたよというだけのことではありません。

もうひとつ、玉川学園が自学自律を大事にしていることから、幼稚園のときからできるだけ自分から進んで活動する場面を提供したいと思っています。決められたことをすること(お片づけ等)の大事さはもちろんですが、何が楽しそうかを発見すること、一人でやっていて楽しいけれど、もっと楽しくするためにはどうするか。そのようなことが自ら解決できるように、自発的な遊びを大切にしています。

幼稚園でお預かりしているのは1日の内の4時間です。あとの20時間はご家庭で過ごすことになります。365日のうち約200日が保育日数。その総時間数の1/6が幼稚園で、その他はご家庭の時間ですから、ご家庭と一緒に育てるということは大切なことです。

いつも専属の英語の先生が身近にいる環境です。

英語をやっていますといいますと、多くの方は英会話教室を連想されますが、玉川学園幼稚部の場合は違います。子供たちにとって英語の先生がいる、私達とちょっと違う人がいるという、英語の環境を玉川学園では整えています。

毎朝英語の先生が門のところに立ってくださいます。私と英語の先生が立っていますと、私には「おはようございます」英語の先生には”Good morning.”とか”Hello.”と言います。

そのようにしなさいではなく、このような使い分けが自然にできる。挨拶という範疇では同じなのです。日本語の歌を歌うのも、英語の歌を歌うのも、歌うという範疇では同じなのです。

子供たちが全部日本語で話しかけていて、英語の先生は全部英語で答えていても、それでも大丈夫ということを体験させています。

4月に年少のお子さんが英語の先生が怖いと言って、先生がいるところは目をつぶって通っていましたが、今は平気になりました。英語の先生も英語しか教えないといったことではなく、全ての保育にかかわります。

お弁当の時に、お茶を配るのですが、子供たちは、担任が配ると「ありがとう」、英語の先生が配ると”Thank you.”とか”Please.”とか言います。きっかけとしてそのような英語を教えますが、使い分ける構えが子供たちの中でできていっている。これが上手く育っていくことによって、言葉に対する感性や関心が高まっていくのではないかと思います。

ご父母と幼稚園はネットワークで繋がっています。

ネットワークは100%繋がっています。高校までの学校全体のCHaT Net(Children Homes and Teachers Network)という独自のネットワークです。ご父母と小学校4年生以上はIDを持っています。

幼、小、中、高とそれぞれのネット上の部屋があり、それぞれの情報発信をしています。幼稚園の場合は、子供は入って来ませんから、ご父母と私達が、より密接に話し合いができます。これも父母会と同じような、教育の場であるということでご父母には参加していただいています。お互いのスキルアップのため自主的な講座も開かれています。

毎日、保護者の方々はお迎えに来ているのですが、今何が起こっているかわからないこともあります。今日の様子をデジカメで撮ってすぐにネット上で見ていただいています。幼稚園のご父母であれば、小学校から高校までの教育情報も見ることができます。

今日、ご父母が花を植えていただいた様子がたぶんもうネットにアップされていると思いますよ。

PC講座の様子以前は1つの教室にコンピュータをたくさん並べて使っていましたが、現在は、全て無線で対応しているので特別教室を設けることはしていません。子供たちのためにコンピュータを保育室を始め、目に触れるところに置いたり、使いたい子供には使わせたりしています。

英語が環境として大事であると同じように、コンピュータも環境として大事なので、保育にどう取り入れていくか考えなければならいひとつです。子供たちの中では、ままごと遊びのようにコンピュータも遊びの一つとして利用されることがあります。

幼稚園と家庭をつなぐメディアとしてのコンピュータは、重要な役目を担いつつあります。「学び」にかかわる内容をコンテンツとして持つことも検討しています。今日歌った歌を家でも歌えるような情報が配信されていたり、園庭で見つけた草花や虫の情報が配信されていたりすることで、家庭でも幼稚園の生活が追体験できるはずです。

家庭への連絡という面からは、今後は、コンピュータの機能をモバイル(携帯電話等)へ代替できるかどうかも課題の一つと思っています。

送り迎えの時にコンピュータの近くにいらっしゃるとは限りませんので、緊急連絡は、携帯電話に流すか、URLを事前にお知らせして携帯電話から個人でアクセスしていただくか、プライバシーにも関わりますので、慎重に進めています。

今後、安全面も含めて、世の中の状況に合わせて、実施していかないといけないところもあります。

印象に残っていること

幼稚園に来て一番印象深いことは、子どもたちの通ってくる様子です。学園の中央付近に門がありまして、大学生も高校生も中学生も小学生もほぼだいたい同じ時刻に登校してきます。大学生の中には完全に体重が後ろにかかっている姿も見られますが、幼稚園の子供たちは体重が前にかかっていて、頭から「おはよう」とやって来ます。それを見ていますと関係者でなくても顔がほころび、うれしい気持ちになってきます。そのような幼稚園の子供たちのひたむきさを私達は大事にしないといけないと実感しています。もちろん小学生も中学生も喜んで学校に来ているのですが、一途さが明らかに違っているように感じます。お母さんの手を振り払って駆けて来る子供たちのニーズに、私達は十二分に答えなければならないと思っています。

小学部時代、1年生で担任した子どもを5年生でも担任したことがありました。5年生の担任が終わる時に、1年間自分は一所懸命やってきたけれども、先生に何か言いたいことがあったら書いてくれと言いましたら、その子に「先生のやり方は、1年生に対して教育したのと同じスタンスだ。僕達は5年生なんだ。先生もそのつもりで任せるところは任すということじゃないといけないんじゃないか」と指摘されたことがあります。

私達は圧倒的に権力のある側に立ってしまっていて、ついつい子どもが進んでいるのと同じように自分が進んでいるかどうかと考えることを忘れがちです。その時は、もちろん気をつけてずっとやってきたつもりでした。

学園創立者小原國芳は「進みつつあるもののみが人を教えることができる」ということを常に熱く語っていました。それを聞きながら育った私なのですが、子供から指摘されて、そうだったなと、もう一度原点に戻れました。

私にとっては、初めての高学年担当でしたのでその時は張り切って高学年を担任し、これでどうだ、と思っていたのです。

そのようなことを言った子供が、何年かして訪ねてきてくれて「先生、がんばっている?」と言ってくれたことはとても忘れられないことですね。

幼稚園を担当して初めて、教え子の子供を受け取りました。私に預けてもらって、とてもうれしく思っています。また、かつての教え子は今は同僚となっています。そのうち上司となる教え子が出るかもしれません。これも、教師としての喜びの一つです。

私達がお伺いした時刻には、お花を植えるお手伝いをされているご父母がたくさんいらっしゃって、とてもにぎやかな雰囲気でした。子供たちと一緒に過ごせる機会がたくさんあることは、子供たちが大きくなった時に、きっと一緒の思い出がたくさんできるでしょうね。

櫻井先生、本当にありがとうございました。

2004年9月7日(火)玉川学園幼稚部にて

玉川学園

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