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横浜山手中華学校

JR石川町、みなとみらい線元町中華街、いずれの駅からも徒歩15分ほどの丘に横浜山手中華学校はあります。幼稚園と小中学校に約400人の生徒を擁する学校です。

お話を伺ったのは潘民生校長先生。日本で生まれ育ち、ご自身もこの学校の卒業生です。

現在では華僑だけでなく、日本国籍を取得した華人、日本人、来日して数年という中国人など、さまざまなバックグラウンドを持つ子供たちが、分け隔てなく机を並べています。小学5年生から導入されるネイティブ教師による英語の授業を入れると、バイリンガルどころか中国語(普通話、いわゆる北京語)、日本語、英語の3ヶ国語教育が行われています。しかも、家族が広東語などを使えば、子供たちはそれ以上の言葉を理解していることになります。

 

横浜山手中華学校の校舎

校舎

横浜山手中華学校は、1859年に横浜が開港した約40年後の1898年に華僑子弟のための教育機関として設立された、とても歴史の長い学校です。2009年は横浜開港150周年にあたり、私たちの学校も横浜開港とともに、歩んできました。

カリキュラムについて

伝統的な中華文化の普及と中国語の教育という教育方針のもとに、中国の文化と言葉を学びながら、日本の高等学校に進学できるように、日本の教育課程に合わせた内容の学習も行っています。日本の公立中学校では週28時間ですが、横浜山手中華学校の中学生は土曜日も含めた週35時間授業を受けます。教科によって、中国語で行われるもの、日本語で行われるものが分かれています。一つの科目を中・日両国語で行うことはありません。受験準備をする必要のある中学校より小学校の授業のほうが、中国語による授業時間を多くしています。


潘民生校長先生

先生が一方的に話して授業を進める形式の一斉授業はほとんどなく、中国語の言語教育においては、聞く、話す、読む、書くと知識修得と他の教科では、先生の講義の部分と授業での要求に基づいてトレーニングするという生徒参加型の授業を目指しています。生徒自身がどこの部分の学習しているかを意識させるという目的に合わせた形の授業を行います。
生徒個人の勉強は一人ひとりの家庭学習にまかせ、集団教育である学校教育を意味あるものにするように工夫をしています。
教室の机は2つずつ並んでいますが、これにはちゃんと目的があるのです。模倣、復唱、説明、まとめ、討論、発表、次に繋げるという7つに分けた学習パターンをまず理解させ、さらに、ペアで、隣の席の人を相手に実践するためです。

 

中国語と日本語のバイリンガル教育

日本でバイリンガルというと横文字の英語やフランス語を日本語以外に話せることを想像します。これらの言語は表音文字です。読んで発音すれば意味がわかります。しかし、中国語の漢字は表意文字です。文字を読み書きするときには、漢字の意味も理解しないといけないわけで、何倍も難しくなるのです。表意文字のバイリンガル教育は、日本でも普及していなく、研究もあまり進んでいません。バイリンガル研究者と交流して教育方法を研究しているところです。
私たちはより効果的な教え方を常に模索しながら授業を進めています。

中国語の授業の様子

例えば日本語の「娘」という漢字があります。日本語では親から見た女の子どもを「娘」といいますが、中国語の「娘」はお母さんの意味になります。その他にも日本語の「汽車」は中国語では「自動車」。両言語の意味が違うのです。同じ漢字でも意味が違うことを子どもに教えないといけません。また、和製漢字も問題になります。「辻」「峠」は日本の漢字で、中国語の漢字にはないので辻はその一部である十のところに注目し、中国語で十「shi」と読ませるようにしました。

一人の先生は担当する生徒に対して中国語と日本語の両方で教えないようにしています。
その先生が話す言葉によって言語のイメージを定着させるためです。
子どもたちはスポンジのように吸収力がよく、とても難しいことを難なく習得していきます。

大部分の生徒は、学校から一歩外に出ると日本語しか使わない環境で生活しているため、第1言語が日本語、日本語でものを考えています。第2言語が中国語となっています。

6年生の英語の授業の様子

第2言語は第1言語(日本語)を介さずに学びます。そうしないと頭の中で翻訳する習慣がつくからです。
英語でいえば、文型This is a pen.を、日本語におきかえずに理解する回路を作るための練習をします。penをいろいろな名詞に変えて反復することで、語彙を増やすことが中心です。第2言語の「聞く」「話す」「読む」「書く」を9年間学習します。翻訳というステップを経ずに言葉を理解できるようになるために、自宅で読み方の基本練習や文型練習をして、道具として中国語を使えるようにします。

入学までほとんど、あるいは全く中国語に接する機会がなかった子供たちが、始めから中国語で授業を受けて大丈夫かと思われるでしょう。
この学校では独自に作った教科書を使っています。例えば、小学1年生の算数は、カラフルな絵を中心に簡単な中国語の説明を入れて、算数の考え方を教えます。足し算の練習では、絵を見てイメージしながら繰り返すことによって、引き算も感覚的に学ばせます。先生はこの作業を中国語で指導します。日本語で生徒が質問しても中国語で答えます。数学的ロジックを中国語で教えて、算数を中国語で考えられるように教育していくわけです。

独自といえば、作文の書き方の教科書もあります。手本となる文章を分析しながら、構成の仕方や作文に必要な技術などを学ぶのですが、日本の小学校にはないものです。

 

素質教育

日本語で表現すれば「能力開発教育」となるのでしょうか。
考える力、判断、表現する能力をつけることが学校教育では必要だと考え、小さい時からの5つの習慣をつけさせるようにしています。学習習慣、生活習慣、労働習慣、礼儀習慣、自己コントロール習慣です。身につくことによって一生役立つ習慣になり、学校と家庭で一緒につける習慣でもあります。

教育方法が確立していないので定着が難しく、成長途上でありますが、子どもたちの能力は、結果だけでなく、プロセスで評価するようにもしています。お互いに学びあうことを大切にしています。本来の教育に必要なのは能力の開発、子どもたちの能力は千差万別であるということを前提にしています。

選りすぐりのものだけでなく全て生徒の成果や作品を掲示しています。これも私たちの学校の特徴です。
自分と相手を認めるいい機会になると思っています。違いを違いとして認めさせることが教育であり、比べることを学校教育のプラス面と捉えています。

 

横浜山手中華学校が抱えている問題点

横浜山手中華学校は現在、両親ともに日本国籍の子弟20%弱、日本国籍を取得した元中国国籍(華人)の子弟が36%、30%強が中国本土からきた子ども達です。日本国籍の子どもたちと中国籍の子どもたちが一緒に学んでいます。本校の通学区域ですが、遠いところでは、北は埼玉県川口市、東は新小岩、西は西立川市、南は茅ヶ崎から通ってきます。56%以上は電車バス通学しています。

残念なことに、横浜山手中華学校は文部科学省から学校と認めてもらっていないためいろいろな問題を抱えています。他のインターナショナルスクールと同じで、各種学校として扱われています。横浜山手中華学校が他のインターナショナルスクールなど外国人学校と大きく違うのは、中学部を卒業する生徒の全員が日本の高校を受験する点で、全員が日本の高校に進学していることです。東京都や神奈川県の私立高校は全て受験できます。東京都の公立高校は中国籍の生徒は受験できますが、日本国籍の生徒は受験できません。文部科学省は、日本国籍の生徒が横浜山手中華学校に入学することが法律上では違法となるといわれているからです。

校庭で遊ぶ生徒たち

それを理解した上でもなお、横浜山手中華学校を選んでくださる親御さんたちが年々増えています。17年度入試では、在校生・卒業生家族の華僑・華人優先のため、残り枠が3名になってしまい、その枠に22名のご応募がありました。皆さんを受け入れたい気持ちはありますが、抽選で選考させていただきました。

1年前のみなとみらい線開通で、渋谷と中華街が直結して1日12万人以上の人が中華街を訪れるようになりました。港ヨコハマにとって、中華街は欠かすことのできない観光資源です。伝統の文化が継承され、おいしい食事を提供する店で活気溢れる中国語が飛び交ってこそ、その価値は高まるはずです。中華学校は長年にわたって、横浜中華街の文化を支え続けてきました。

教育を受ける権利は平等にあるはずなのに、6歳から15歳までの義務教育課程として認めてもらえていないことが原因で、経済的にも補助金は日本の学校の1/5〜1/6ですし、教科書も有償です。学校保険制度などで一般の小中学校のような保険に加入が出来ません。手狭になった学校の移転もいろいろな法的規制でなかなか簡単ではありません。
日本が好きで住んでいる外国籍や、日本国籍を取得した人たちにとても厳しい規制が、見えないところにあります。子どもたちは、学校では国籍が違っても、みんな不思議なくらい全く差別がなく仲良く勉強しています。

日本と中国の国交回復当時、5万人しか日本に住んでいなかった中国人が、今は50万人になりました。
上海の日本人学校の生徒数をご存知ですか、去年の4月1日現在1670名在籍しています。世界はとても大きく動いています。日本もそろそろ変わらないといけない時期に来ているのかもしれません。

日本の横浜中華街を、国際都市横浜の名に恥じないよう、住民の方が守っていかなければなりません。横浜山手中華学校のあるこの地域は、元町商店街・山下公園商店街・横浜中華街を日本人と中国人が一緒になって今まで築いてきた文化があり、その文化を楽しむために人々が来て下さると思っています。
その一端の中国文化をこれから担う子どもたちの教育制度に日本の方々が少しでも目を向けていただければと思います。

廊下に展示されている生徒作品

 

日本にいながら中国人としてのアイデンティティーを大切にしたいと思っても、簡単にかなえられるものではないようです。中華学校は全国に5校しかありません。想像以上のご苦労があるとは思いますが、横浜中華街という街の魅力を支える大切なメンバーを育てる中華学校が発展を続け、障害が少しずつ取り除かれていけば、街の発展にも繋がるのではないかと感じました。

今回までの「1年まえ組」で取材をしたインターナショナルスクールに入学する子どもたちは日本を離れて母国に戻ったり、海外の大学を目指す場合がほとんどです。
しかし、今回インタビューに応じていただきました横浜山手中華学校は、日本の高校、大学に進学して、潘民生校長先生のように日本社会に貢献していく子どもたちを育てています。

本当にグローバルな国になったといえるように、私たち日本人がもっと目を開いて、国籍によって不利を生じない国際化がもっと進むことを望みます。

 

2月14日(月)

横浜山手中華学校 HP

 

「1年まえ組」からのお願い :

横浜山手中華学校様は、今まで、大手新聞等に掲載されて、日本の方々から、進学についてのお問い合わせが大変多くあるそうです。現在、横浜山手中華学校では幼稚園児から中学生が狭い校舎で勉強に励んでいます。現在のところ、今以上の生徒さんの受入は、とても困難なようです。この記事を掲載させていただくにあたり、横浜山手中華学校様へのお問い合わせは弊社が責任を持って対応させていただくことにしています。何かお問い合わせがございましたら、「1年まえ組」阪田までご遠慮なくお知らせいただけましたら幸いです。必ず、お返事させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

お問い合わせはこちら お問い合わせ

(「1年まえ組」担当:阪田洋子)

 

No.6 3/15更新

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