新渡戸稲造晩年の苦悩−憂国と愛国の間で−(35)
ボルシェビキ・ロシアの餌食となって…
新渡戸の目には、スチムソン宣言は第三者の干渉であり、それは結局日清戦争後の「三国干渉」と同じ性格のものである、と映じていた。それは満州事変の結果、日本帝国主義が大陸に得た権益を侵すものに他ならなかった。そして、もし「スチムソン氏の方策が推進されれば、結局は満州をロシアに提供してしまう」ことになるとロシアの脅威をアメリカ国民に警告することによってこの演説を終える。
「中国の救済は、中国の対日協力にかかっている。日本の将来は、中国の将来と深く結びついている。日中両国民を結ぶものは、他でもないこの満州である。いまのように満州が弱体化し、無秩序の状態のままであるならば、いずれ、この地域はボルシェビキ・ロシアの好個の“餌食”となってしまうだろう。私は、スチムソン氏の方策が推進されれば、結局は満州をロシアに提供してしまうことになり、この極東地域に、絶え間ない紛争の拠点を作り出すことになるのを、心から恐れるものである。したがって、われわれは、人類の名において、もう少し忍耐を重ねて、不戦条約を研究・運用し、現実に対して実際的で適用できるものにしようではないか。そして、新しい管理体制が、この極東の地と、ひいては世界に恒久の平和をもたらすものとなるように、努力しようではないか。」

Photo by 飯田純一
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- 渡戸稲造晩年の苦悩
−憂国と愛国の間で− - 第36回 悲しい「護国の鬼」
- 第35回 ボルシェビキ・ロシアの餌食となって…
- 第34回 「第三者の干渉のゆえに」
- 第33回 「満州事変は自己防衛」
- 第32回 「愛国心は国民を偽善者とする」
- 第31回 満州国は傀儡である、と
- 第30回 “Poor Old Nitobe”
- 第29回 スチムソン会見
- 第28回 五・一五事件
- 第27回 行け、汝の内なる光を頼りに
- 第26回 盲目の指導者たち
- 第25回 盲人が盲人の手を引く
- 第24回 アメリカへ
- 第23回 忍ぶ心は神は知るらん
- 第22回 古への目ざめし人の跡見れば
- 第21回 森垣太郎への手紙
- 第20回 左近司談話
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