新渡戸稲造晩年の苦悩−憂国と愛国の間で−(33)
「満州事変は自己防衛」
新渡戸は在米中3回、CBSラジオでアメリカ国民に呼び掛けた。第1回目は5月8日、「日本と国際連盟と不戦条約」、第2回目は5月20日、「日本の希望と恐れ」、そして3回目は8月20日、「日本と不戦条約──不戦条約に関するスチムソン氏の覚え書きに対する日本側の反応を中心に──」であった。最後の放送は、満州事変を不戦条約──ケロッグ・ブリアン条約──に違反した日本の侵略であるとして非難したスチムソン国務長官の放送に反論を加えたものであった。新渡戸はこの演説の中で、(1)満州事変は自己防衛の手段としてなされたものであって侵略ではない。従って不戦条約を侵犯しているとするスチムソンの非難は当たらない、(2)満州国は一般的に考えられているように日本の傀儡政権ではない、(3)日本のリベラル達が当初反対であった満州事変に賛成していったのは、スチムソン宣言のような「海外からの脅威」があったからである、と次のように述べた。
(1)
「日本は、不戦条約の侵害者と呼ばれることに、深い悲しみを覚えている。日本は、同条約の規定内で行動してきた、と主張する。日本は非平和的手段に訴えたが、それは、『国家政策の手段として』ではなくて、自己防衛の手段としてであった。」
「日本はもちろん、最悪の場合に備えなければならない。日本は、世界の巨大な三つの国家、すなわち中国、ロシア、アメリカと面と向かいながら、孤立している小さな国である。日本は、自らの生存権を守るために孤立しているが、それは、しばしば申し立てられるような外部征服のためではなく、創造主から与えられた生命の保持のためである。日本のこの勇気に対して、ささやかな信用くらい与えてくれてもよかろう。」

Photo by 飯田純一
Back Number
- 渡戸稲造晩年の苦悩
−憂国と愛国の間で− - 第36回 悲しい「護国の鬼」
- 第35回 ボルシェビキ・ロシアの餌食となって…
- 第34回 「第三者の干渉のゆえに」
- 第33回 「満州事変は自己防衛」
- 第32回 「愛国心は国民を偽善者とする」
- 第31回 満州国は傀儡である、と
- 第30回 “Poor Old Nitobe”
- 第29回 スチムソン会見
- 第28回 五・一五事件
- 第27回 行け、汝の内なる光を頼りに
- 第26回 盲目の指導者たち
- 第25回 盲人が盲人の手を引く
- 第24回 アメリカへ
- 第23回 忍ぶ心は神は知るらん
- 第22回 古への目ざめし人の跡見れば
- 第21回 森垣太郎への手紙
- 第20回 左近司談話
- 「Warm Heart Lecture」バックナンバー
- 「Warm Heart Letter & Essay」を読む


