新渡戸稲造晩年の苦悩−憂国と愛国の間で−(20)
左近司談話
「新渡戸博士が過日、愛媛県下で新聞記者と会見の際にわが軍部を誹謗(ひぼう)する内容の新聞記事が一部の新聞に掲載せられて、世間の問題となり、糾弾運動を起こすというような風評が伝えらるるに至った。僕はかねてから博士のごとき欧米人筋と交際の厚き紳士に事態の真相を承知しておいてもらって国家のために大いに努力していただきたいと考えていたので満州問題、上海事件などのいきさつを説明かたがた陸軍省の永田大佐とともに博士を訪問した。しかるところ博士は右会見談として伝えられる新聞記事が全然博士自身の意思と異なるにかかわらず、世間の一部に博士の真意を誤解するものあるを心外とし、細かく当時の論旨について説明された。
なお、この時局問題に対して博士が従来海外に向かって公表された意見の内容も承知し、両人(左近司、永田)も釈然として博士の心情を了とし、重ねて国家のために一段と尽力ありたき旨、申し述べ引き取った。」
この時、左近司、永田の二人は新渡戸に満州問題、上海事件のいきさつを説明し、「重ねて国家のために一段と尽力ありたき旨」を要請した。両人のおだやかな要請に新渡戸は「ノー」とは言えなかった。

Photo by 飯田純一
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- 渡戸稲造晩年の苦悩
−憂国と愛国の間で− - 第36回 悲しい「護国の鬼」
- 第35回 ボルシェビキ・ロシアの餌食となって…
- 第34回 「第三者の干渉のゆえに」
- 第33回 「満州事変は自己防衛」
- 第32回 「愛国心は国民を偽善者とする」
- 第31回 満州国は傀儡である、と
- 第30回 “Poor Old Nitobe”
- 第29回 スチムソン会見
- 第28回 五・一五事件
- 第27回 行け、汝の内なる光を頼りに
- 第26回 盲目の指導者たち
- 第25回 盲人が盲人の手を引く
- 第24回 アメリカへ
- 第23回 忍ぶ心は神は知るらん
- 第22回 古への目ざめし人の跡見れば
- 第21回 森垣太郎への手紙
- 第20回 左近司談話
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