新渡戸稲造晩年の苦悩−憂国と愛国の間で−(6)
偽りの口実をもうけて始められた戦争
新渡戸が、柳条溝で起こった満鉄爆破事件と、それに呼応して出撃した関東軍の動きを、どの程度詳細に把握していたか知る術はないが、彼は少なくとも当時この戦争を「不十分な根拠をもとに、また偽りの口実をもうけて始められた戦争」であると認識していた。その5日後9月24日の編集余録では彼は次のように述べている。
320 ひいきにする
31・9・24
どんなに勇敢な行ないでも、正しくなければ賞めるべきではない。敏速この上ない行動でも、正義をその基礎としていないなら、単なる軽業にすぎない。
国家間の交渉にあっては、ずるいごまかしがどんなにもっともらしく行なわれても、また武力誇示がどんなに恐るべきものであっても、それはただ一つの問題をすら、永久に落着させることはできない。それは将来の紛叫の種をまいているだけである。

Photo by 飯田純一
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