第34回 友への手紙
向井去来 −世の理屈を謂うべからず
今年学会からの帰途、ワイフの慰労も兼ね、洛西の落柿舎を訪ねました。柿落葉舞う小春日和でした。入口に「落柿舎御札俳諧奉行向井去来」とあり、
一、我が家の俳諧に遊ぶべし。世の理屈を謂うべからず
一、雑魚寝には心得あるべし。大鼾(おおいびき)をかくべからず
……
と書かれてありました。2人で日当たりの良い縁側に腰掛けている間に、すっかり愉快な気分になり、私も拙い俳諧に遊ばせてもらいました。
君あれば 共に雑魚寝の にごり酒
蓑傘の ありて主なし 柿の庵
北嵯峨の 主は不在 柿落葉
雑魚ばかり 集まっている 柿の宿
ダボハゼに 鯛が寝方を 聞く夜かな
鰯(いわし)寝て 鯛は起きてる 柿の宿
去来には、
君が手も まじるなるべし 花芒(すすき)
稲妻の かきまぜて行く 闇夜かな
などの句があります。慌しい現代人の生活を見るにつけ、先人の精神のゆとりを羨ましく思いました。彼の墓を詣でその小ささに呆れました。
そちはまあ 小さくなりぬ 秋の風
ご健勝をお祈り申し上げます。

福原良喜
Photo by 飯田純一
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