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銀八教授のWarm Heart Letter & Essay

銀八教授(福原好喜)のプロフィール

銀八教授の本

第32回 大盤振る舞い

一連の駒澤大学経済学部創立50周年記念イベントのフィナーレはビアパーティであった。5台の折りたたみ式自転車を競う学長ジャンケン大会は大変な盛り上がりとなった。参加学生全員がウォーム・ハートTシャツを着て雨宮学長とジャンケンをした。学長はジャンケンの前に言った。

「経済学部創立50周年にちなんで、ワタシはパーを出します。くれぐれもグーを出さないようにして下さい」

こんな親切な学長はいない。これはもうカンニングではないか。

宴たけなわとなって、経済学部に関係ない人でも、参加者全員にカンビールが振舞われた。サンドウィッチやつまみも山のように用意された。経済学部半世紀に一度の大盤振る舞いである。アルコールが大分行き渡って、ソロソロ大つごもりという頃、一人の学生が総合司会の私のところへやって来た。

「先生、ビールが欲しいんですけど…」
「ビールはそこに積んである。好きなだけ飲んでくれ」
私は答えた。
「そうじゃあないんです。ケースが欲しいんですけど…」
「ケースではやらん」

と接待用の机の後ろに積んであったロングカンのケースを見た。
山のように積んであったカンビールの段ボール箱がない。

「キミ、どうしてビールもらいに来たの?」

私はその学生に尋ねた。

「ええ、駅から来る途中、何人もの学生が大学でもらったと言ってカンビールのケースをかついでいましたから」
「……」

私はビアパーティの終わった次の経済学史の授業で500人の学生を前にして怒鳴った。

「私は、パーティでビールは飲み切れないほど用意した。好きなだけ飲んでくれとは言ったが、箱ごと持って行けとは一言も言ってない。ドロボーは俺が許さない。ドロボー根性は俺がたたき直してやる。盗んだ奴は出て来いッ」

立ち見もいる500人の大教場は水を打ったようにシーンと静まり返った。

パーティの振る舞い酒はどこの国でも飲み放題である。しかしだからといって、ホストの酒蔵から酒を持って帰っていいということにはならない。無断で持ち帰れば立派に刑法の対象となる。善悪の区別をハッキリと教えるためには、時に怒って見せなければならない時もある。

Photo by 飯田純一


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