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第27回 武相中学・高等学校 吉野正彦先生のご紹介
子ども達の進路を考える学校情報サイト「1年まえ組」に投稿できる機会をいただき、あたりまえに過ごしている学校での日常について、改めて見つめ、綴ってみたいと思います。
中高6年間という時期は、心身ともに柔軟で、たくさんのことを吸収することが可能な、人生の中で最大の成長期であると実感しています。中1と高3の生徒を単純に比較してもわかるし、また一人の生徒の6年間を追ってみても明らかな事実です。それは、大人になってからの6年間とはとても比較にならない、気持ちのいいほどみごとな成長ぶりであるといつも感じます。それに寄り添い、自らもわずかに変化しながら、生徒一人ひとりの成長を見届けられる教師という仕事の充実感は、何ものにも代えがたいものです。
「考えることのできる女性(ひと)」
横浜国際女学院翠陵中学・高等学校は、1940年創設の学校法人堀井学園を母体とし、高校は1986年に、中学校は1999年にこの地に開校しました。
学園の創設者堀井章一氏の教育理念である、「教育の根本義は、人間に『考える生活』の基礎を与えるものであり、人間は深く考えることによって、その生活行動に中正を失わず、自己の完成へ進み得るとともに、決して他人の妨げとならぬ生活態度を養うところにある」という教えに基づき、「考えることのできる女性(ひと)」を校訓としています。
見つめているのは世界です

「人」として「女性」として大きく成長する、この中高6年間において、翠陵では、その手段として教育の2本の柱である「国際理解教育」と「外国語教育」を実践させながら、自己の完成を目ざしていきます。そして、その過程は3つの段階としてとらえています。まず第一に『世界を知る』こと。次は『違いを認める』こと。そして最後に『自分を見つめる』ということです。
この3つの段階を一つずつきちんと踏みしめることで、その目標へ一歩ずつ向かい、最後には自分の人生をしっかりと歩んでいける、ひとりの「考えることのできる女性(ひと)」へと育っていきます。
多彩な国際交流による「国際理解教育」

翠陵には、日本にいながら国際交流ができる機会が豊富にあります。中国・メキシコ・アメリカにある3つの姉妹校から派遣された留学生。各機関からの中・長期留学生。日本の大学で勉強中の留学生。その他各方面で活躍中の諸外国の方など多くの方々が来校し、いつも賑やかで、1年間で20ヶ国以上にもなります。今年はアメリカのOberlin大学で日本語教師を勤める、本校の第4期卒業生が10人の学生を連れての来校もありました。そして、それらの方々とは、授業を一緒に受けたり、全校一斉の交流会を楽しんだり、「国際理解」の授業で自国の文化や習慣を紹介していただいたり、ホストファミリーになってお世話をしたりなど、常に直接的な交流をしています。私も度々引率教員のホストファミリーを引受けていますが、毎回新たな充実感があり、癖になっているのは事実です。
今年最後にやってきた留学生は、12月から3ヶ月間滞在したオーストラリアからの17歳の女の子でした。所属ホームルームでの彼女の17歳のバースデイパーティをスタートに、彼女の毎日は、特別時間割にそって、カバンひとつを携えていろいろな授業に参加するというものでした。中1のあるグループ作業の授業では、一緒に作業をしたい数グループによる彼女の争奪ジャンケン大会から始まり、アイドル並み?の扱いに、彼女もうれしそうに作業は進みました。今年から初めて英語を学習している中1は、当然のことながら、身振り手振りばかりのBody Languageです。でも、笑いが起きて盛り上がったり、真面目な顔して説明を試みたりと十分通じている様子です。人との会話には、伝えたいという意欲が大切であることの見本のような光景でした。
また、日本を離れる機会としては、中3の秋にオーストラリアで実施される一人一家庭のホームステイへの全員参加があります。今まで3回引率していますが、生徒たちの新しいことに対する柔軟な気持ちとそれを吸収する力には、大人が期待している以上のものがあり、毎回驚かされます。研修のごく最初こそ言葉の壁に涙し、くじけそうになる生徒が多くいるものの、徐々に打ち解け、すべてを受け止め、もう随分前からそこにいたかのような雰囲気になります。そして2週間の研修の最後には、ほぼ全員が「日本に帰りたくない」と言い出します。そして、帰国してからの体験文には、初めて垣間見た新世界への感想に始まり、日本についての再発見、研修に参加させてくれた両親への感謝、ひいては自分自身の再発見と、実に多くのことが綴られ、机上での学習のみからは得られない、貴重なものを得たことがわかります。「可愛いい子には旅をさせよ」とはこのことをさすのではないかといつも思います。
その他の機会としては、校内選抜を経て派遣される3姉妹校への短期留学や、高2で実施されるイギリス、カナダ、アメリカにおける目的別の海外教育研修への参加があり、それらを通じて、また別の視点から世界を見つめることになります。
これらの多くの国際交流の機会を通じて、生徒たちは皆、呼吸をするのと同じようにごく自然に、いろいろな体験をし、「あたりまえ」の日本の生活から「あたりまえでない」ところへ目を向け『世界を知る』機会をもちます。そして未知の世界を知ることで、世界には様々な価値観があることを実感し、理解し、『違いを認める』ことの大切さを学び、自分の隣にいる友達も、実は、自分とは違う一つの大切な個性であることに改めて気づきます。そしてそこから得た体験が、自分を振り返ること、つまり『自分を見つめる』ことにつながり、それがものごとを考える礎となり『考えることのできる女性』に一歩ずつ近づいていきます。
私も教員生活の途中で、4年間ほど日本を離れ異文化での生活を経験いたしました。大人になってからではありましたが、まさに「自分再発見」の体験であり、そこから人生が変わったといっても過言ではありません。ですから、中学高校時代の心身ともに柔軟なこのときに、これらの体験は大変大きな刺激であり、大人の数十倍はあろう吸収力で、どんどん自分のものにしているといつも感じています。

独自の「外国語教育」
「国際理解教育」を実践するためには、そのツールとして英語を欠くことはできません。翠陵では日常の様々な場面で英語を使うチャンスが用意され、いつどこで英語を使っても、誰も変に思わない雰囲気があり、自然と身についていきます。
翠陵の一日は、本校のネイティブ教員によるオリジナル英会話番組『Morning Mini Lesson』で始まります。毎朝、英語のシャワーを浴びることで、自然に頭の中には英語を吸収するスポンジが出来上がります。また、中学生の授業としての週4時間の英語。それとは別に設けられた週2時間の英会話があり、ともに15人前後の少人数制で展開されます。ここでは、教師と生徒、または生徒どうしの自由なやりとりを通して、ABCを書くことから始まった英語が「楽しい英語」へ、そして「使いたくなる英語」へと自然に変化してくのです。英会話を担当する4人のネイティブ教員との会話は、授業中だけでなく休み時間や放課後もいたるところで繰り広げられます。先日も教員室である中学生が、理科の先生へ提出したいレポートを、ネイティブ教員に懸命に英語で頼んで、机の上に無事置いてもらえたという場面を見かけ、思わず微笑みました。また、ハロウィンの日には「Trick or treat」と言ってキャンディをもらえる光景も翠陵ならではだと思います。こうして、生徒たちは自然な形で使える英語を身につけていきます。
また、文部科学省のSELHi(スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール)指定2年目を迎え、研究も軌道に乗り、すでに達成目標を上方修正する成果をあげています。
風光る翠(みどり)の丘
本校については、その環境を抜きには語れません。横浜市北西部の自然環境豊かな丘陵地に位置し、総面積37,753㎡の敷地に校舎が広々と配置され、ヒノキ、ケヤキ、クヌギ、シラカシなどの木々や、春の桜を始めとする四季折々の花々に囲まれています。

四季の移り変わりを授業を受けながら教室の窓から楽しめる学校は、なかなかないと思います。私自身も、毎朝校門をくぐり、木々の緑に囲まれ新鮮な息吹を感じながら玄関まで進む間に、心が自然と落ち着き、わずかな間に一日のエネルギーを充電している気がします。何度となく繰り返した出勤のひとときですが、変わることなく毎日同じように感じます。授業をやっていてもベランダを訪問中のカラスやスズメ、そして四季を彩る木々に思わず目をやり、心なしか自分の口調が和らぐのを感じることもしばしばです。
生徒たちも、勉強に疲れたとき、友人と気持ちが通じ合えないとき、部活や進路のことで悩みつまずいたとき、外の景色を眺めたり、また時にはその緑の真ん中に佇んだりして、心を落ち着けていることと思います。
伸び伸びとしてみずみずしく爽やかな翠陵の校風は、この環境が育んでくれているものと思います。
担任としての幸福
今年度私は、前任者が産休に入ったことで、後期(10月)から中1の担任になる幸運に恵まれました。先ずは10月に、理科の校外学習のため、「日比谷線神谷町駅に現地集合」にやきもきし、11月の翠陵祭(文化祭)では発表テーマは決定しているものの、生徒たちの企画運営力に半信半疑。12月には中間試験の不勉強を嘆き、1月は「もうすぐ2年生?これで?」と檄を飛ばし、2月にはスキー教室で猛吹雪の中、遭難者を出さないようにと皆の後ろをこっそり滑る不審者ぶり。そして気がつけば3月。学年末試験です。暫く担任稼業から離れていたために、久々に味わうスリリングで刺激的、しかも幸福に満ちた日々でした。
先日、高校の卒業式が行われ、共に過ごした思い出を胸に多くの生徒が巣立って行きました。卒業証書を受け取る姿は、誰もが皆、6年前とは別人のような立派なものでした。「仰げば尊し」に涙しつつ、生徒たちからの感謝の気持ちは素直に受け取り、私からは、多くの感動と喜びを与えてくれたことへの感謝の気持ちを今年もお返ししました。ふと我がクラスに目を移しながら、この生徒たちの半年間での成長ぶりを振り返り、同じ思いに駆られ、スリリングで幸福だった6ヶ月間を与えてくれたことをクラス全員に感謝しました。そして「卒業式まであと5年。」と勝手に奮い立ちながら、言い知れない幸福感に包まれていたのは、きっと私だけであると満足しています。
自分の人生をしっかりと歩んでいける、ひとりの「考えることのできる女性(ひと)」へ成長した138名の卒業生の後姿を拍手とともに見送りながら、まだまだ成長途中の中1の楽しみな今後に、思いをめぐらせた一日でした。
横浜国際女学院翠陵中学高等学校 HP
1年まえ組 中等部情報
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