私の勤務する洗足学園中学高等学校は、1924年に前身となる学校が創立され現在に至っています。創立者の前田若尾先生は、敬虔なクリスチャンであり、女子教育にその生涯をささげた方でした。校名は聖書の中からとられていますが、本校はキリスト教主義の学校ではありません。ただ、本校の教育理念にはキリスト教の影響を見て取ることができます。また、若尾先生は「社会に有為な女性の育成」を教育目標に掲げられていました。この目標は、現在も本校において最も重要な教育目標です。国際化の進んだ今日の社会に奉仕・貢献できる、知性と教養にあふれた、社会性の高い女性の育成を目指しています。
現代においては、単に学歴があれば成功するとは限りません。コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力など広い意味での人間力が必要とされています。そこで、本校では総合的な人間力をつけることを意図した教育プログラムを作成しています。また、常に変化する状況に対応しながらより良い学校づくりをすすめています。それは、毎年全国から数多くの学校に見学・研修に来ていただいていることからも窺えるのではないでしょうか。

私は、大学卒業後すぐから本校に勤務していますので、もう27年が経ちました。本校が大きく変化していく様をずっと体験してきたといえます。あまり良い表現ではありませんが、「偏差値が5違えば別の学校」といわれます。その点から言えば私は4つくらいの学校を経験したことになるでしょうか。でも、学校が大きく変わりたくさんの受験生に受験していただけるようになったことや生徒や保護者の方に「入学してよかった」、「卒業してよかった」といっていただける喜びは何ものにも勝ります。
私は教員として、授業や生活指導、進学指導などの日常の校務は当然ながらありますが、さらに募集・広報の仕事を任されています。本校の良い点を多くの受験生に知っていただき、受験・入学していただくのが私の役目です。そのため毎日のように、学校見学の案内、個別の説明や相談、学校説明のための資料の作成、広告関係の業者との折衝、雑誌等の取材、アンケートへの回答、学校説明会やオープンキャンパスなどの企画・運営、外部でおこなわれる説明会や相談会への参加、募集や中学受験に関する各種セミナーや勉強会への出席、塾訪問などなどさまざまな仕事をおこなっています。特に、年明けからの出願・入試・発表・手続きなどの一連の入試業務は重要な仕事です。
さて、このような私に、こちらのコラムで普段の説明会などでは話していないような内容のことを書いてほしいとの原稿依頼を受けました。個人的な趣味やエッセイのようなものを書くことは苦手ですので、この夏休み中の学園の様子をレポートしたいと思います。一ヵ月半の夏休みのいろいろな行事で本校の生活の様子や学園が目指しているところがわかっていただけるのではないかと思います。
本校は7月16日から夏休みに入りました。初日の16日には語学研修のグループがアメリカ・イギリスに向けて出発。中学3年生以上の希望者が対象で、ホームステイしながら英語の学習をおこなうのですが、生徒たちにとっては忘れえない貴重な経験となったようです。
18日からは高校3年生の夏期講習が始まりました。8日間連続でいろいろな講座が開かれましたが、夏は受験生にとっての天王山とあって真剣な表情で取り組んでいたようです。私も久しぶりに講座を受け持ち、受験生に対応しました。この夏休み中の講習は前期と後期に分かれており、高校3年生は前期に、高校2年生から中学3年生までは後期(8月21日〜25日)に講習がありました。今年度も多数の生徒が意欲的にこの講習に取り組みました。
高校3年生の夏期講習が始まった18日から、中学2年生のイングリッシュ・キャンプが始まりました。「USAサマーキャンプ」というのが正しい名称なのですが、そのまま聞くとアメリカに全員で行くような印象なので、イングリッシュ・キャンプと紹介しておきます。ただ、キャンプのプログラム・内容は実際にアメリカに行ったよりも濃い内容です。アメリカ人の大学生を中心としたスタッフが生徒6名に一人ずつ付き、食事のときや就寝時まで含めて一緒に行動します。プログラムは多彩で、楽しみながら英語を使う体験ができるよう工夫されています。この2泊3日のキャンプを西湖近くのホテルを利用して学年を2班に分けた3クラスずつで実施し、全員がこの体験をしました。中学1年生で学んできた国際理解の授業、そして中学2年生でのネイティブの先生による週1コマの授業の成果の集大成となったようです。また同時に、夏休み以後の英語の授業にも大きく影響する体験をしたといえます。
19日からは中学1年生のホームルーム研修が始まりました。この研修は、全員が自然に囲まれた環境の中で友情を深めたり、学校では体験できない学習をおこなったりするプログラムです。今年は、その中でも特に絆を深めることに重点を置いたプログラムが実施されました。しかし、今年は雨が多く、特に出発の19日は台風の接近で道路も閉鎖されるほどでしたので、出発するかどうか判断が難しかったのですが、危険が予想されたらすぐ中止にするという条件で出発。翌日のハイキングも行程を変更、キャンプファイヤーのかわりに室内のキャンドルパーティーをおこなうなどはありましたが、全員元気で無事に帰りました。また、学年としての一体感も強まったようです。

27日から8月1日までの5泊6日で勉強合宿がありました。対象は高校2・3年生の希望者です。今年度は150名近くが参加しました。勉強にだけ集中する経験をする、他の生徒の勉強法やがんばりを見て刺激を受ける、普段質問したくても出来ない質問をとことんまで先生に聞く、応援に来てくれる卒業生たちの話を参考にする、…それぞれの生徒が学力レベルに合わせて努力する場がこの勉強合宿です。15年ほど続く行事ですが、年々意識が高まり、裾野が広がっています。がんばろうとする生徒がいるから応援する先生や卒業生がいる。そして、卒業後後輩のためにお手伝いに来てくれる。洗足学園というつながりの中で一人ひとりが成長していることを感じさせられる勉強合宿といえると思います。
夏休み中は、部活動も活発になります。それは、多くの試合・コンクールがありますので、そのための練習もありますし、10月の学園祭(洗足祭)に向けた活動も活発におこなわれるからです。運動部も文化部もそれぞれのスケジュールで活動しますが、合宿は複数のクラブで合同開催するのが洗足の伝統です。その合宿が、8月2日から始まりました。山梨県の山中湖、長野県の南相木村などを中心に実施される合宿で、運動部ではそれぞれが普段の練習では出来ない面を強化したり、戦術を確認したりしますし、文化部では技術の習得と発表に向けた作品の完成を目指すなどの活動がおこなわれます。合宿することで、同じクラブに所属しているという一体感・絆を深めることができるようです。
夏休み中には、教科による取り組みもあります。社会科では、希望者による博物館や史跡を実際に歩いて教員から解説をうける校外学習がおこなわれました。高校3年生の日本史履修者を対象としたフィールドワークは、8月6日に上野周辺で、8月20日には鎌倉で実施されました。日本史の授業で学んだ内容を実際の場所で確認したり、写真で見た資料を自分の目で確認することで歴史を身近なものとして感じることができたようです。また、高校1年生の希望者を対象に、日吉の防空壕跡を見学する会も予定されていましたが、荒天のため冬休みに延期されました。中学1年生は、本校の所在地である溝の口について調べることが9月からの取り組みなのですが、その一環として、郷土史家のお話を伺う会を8月30日におこないました。希望者での実施でしたが、80名近い生徒と2名の保護者が参加したとのことです。また、8月10日・11日には、数学科が中心となりTキューブジャパンという数学科の全国大会が本校を会場として実施されました。数学科教員全員が全国からの参加者と研究をおこないました。このときの研究授業には本校の高校1・2年生が協力してくれました。
このほかにも教科での授業研究・カリキュラム研究、学年での進学対策研究、入試問題の作問など、夏休みでなければ取り組めないことにも多くの時間が使われました。
夏休みが終わり、登校してきた生徒たちの顔には学校が始まってうれしいという気持ちがあふれていたように、私には感じました。先生と生徒が一緒になって洗足の文化が育まれていることを強く感じさせてくれる夏休みだったように思います。