『日差し暖かな春の陽気が過ぎ、新緑あざやかな初夏となった。皐月に生を受けた小さな君は、5回目の誕生日を迎えた。いつも毎日会えるわけではないが、家族みんなで誕生日を祝えて本当に楽しかった。健やかにこの日を迎えることができ、これ以上の喜びはない。ずいぶんと大きくなったものだと改めて思う。「保育園の友達とは、仲良くやっているか?」「先生の言うことはちゃんと聞いているか?」そんな親の心配をよそに、毎日さまざまな経験をしながら、君はさらに大きくなっていくのだろう。でもこれだけは覚えておいて欲しい。科学文明が発達した一見すると何不自由ない世の中だけれど、困っている仲間がたくさんいる。援助を求めている仲間がたくさんいる。苦しみを抱えた人々に「思いやりのこころ」を持って接して欲しい。そして君を支えてくれる大勢の人たちに対して、「ありがとう。」の気持ちを忘れないで欲しい。たくさんの良い友達をつくり、たくさんのことを学んで、「男の子」から「少年」さらに「青年」へと成長して欲しい。「君は将来何になりたい?」「君はどんな学校に入りたい?」そのための勉強は、時には君に辛くのしかかってくるだろう。そんな時も、大いなる夢と希望を持って、失敗を恐れずに歩んで欲しい。机にかじりついた勉強だけでなく、体もしっかりと動かして欲しい。そこから得られることが必ずあるのだから。ずいぶんと難しい話になってしまった。いま君は、ようやく5年生きた。早く、立派な青年となった君に会いたい。その日を父は楽しみに待っている。その日まで父も君の成長とともに、1人の人間として自分の使命を果たすべく努力するつもりだ。息子よ、その小さな羽を力いっぱい広げて大きくは羽ばたけ!5回目の誕生日、こころよりおめでとう。』
子を持つ親となって早5年。されど親業は奥が深く、まだまだ勉強中の身と自覚しているところです。少し気が早いですが、わが子もいつかは受験期を迎えることになると思います。親の立場で子の将来を考えると、学校における生徒への進路指導とは裏腹に、「あの会場テストで良い成績をとって欲しい。」とか「あの学校に入って欲しい。」などの欲望がつきなくなりそうな気配です。子どもにとって、本当に良い教育の場とは何でしょうか?最近、週刊誌等で中高一貫校の状況や大学合格実績などが、公私問わずに取り沙汰されています。マスコミが表現するところの「良い学校」に入るために、少しでも難しい知識を吸収して、試験でそれを吐き出し、見事合格して良かったという安易な進路選択となっていないか大変心配に思います。偏差値偏重でなく、1人1人の個性に合った環境でのびのびと将来への可能性を伸ばせる学校はどこかを家族みんなで話し合う時間が持てたら、何と素晴らしいことかと思います。このサイトをごらんの方々のお子さますべてが、良き教育の機会を得ることができますよう念願してやみません。
私たちが勤務している武蔵野女子学院の本校の愛称は『MJ』といいます。Mは「武蔵野」のMで、およそ10万㎡の広大な緑多きキャンパスを表しています。このキャンパスのなかには、およそ10000本に及ぶ樹木が立ち並び、多くの動物が暮らしています。自然は私たち人間のこころを豊かにしてくれるものです。この環境は何事にも変えられない大切な財産です。また、Jは「女子校」のJで、創立以来82年貫いてきた「仏教精神に基づいた人間としての女子教育」を表しています。いつの時代も失ってはいけないものが「人間性」だと考えます。仏教精神が根付く本校では幸いに週1時間の「宗教」の授業があり、このなかで「他者への思いやりのこころ」を深く学ぶことができます。このようにわが校には、昔から変わることのない大切なものがあります。
しかし、私たちが生きているこの現代の社会では、次々と多様な価値観が生み出されています。そのなかには、一過性のものもありますが、今までの当たり前となっていた事項が、大きく転換せざるを得ない状況に追い込まれる場面も多々見られます。ことに女性が社会に進出し、その権利を主張していくということは、相撲や歌舞伎などに代表される一部の世界に女人禁制といわれるものが存在する以外は、一昔前の日本では考えられないほど当たり前の状況になっています。この社会状況を鑑み、「女子校として何ができるか?」「女性である彼女たちに『先を生きる』ものとしてどんなメッセージを伝えられるか?」を常に検討しています。ここでは、その一端をご紹介させていただきます。

1. 2004年度、高校に『薬学・理系コース』を設置しました。
同じキャンパスに併設されている武蔵野大学に薬学部が設置されることに伴い、薬学部進学はもちろん幅広く大学理系学部への進学を目指した特進コースをつくりました。もともと理系進学の生徒の割合は学年の1割程度でしたが、併設大には理系学部がなかったため各自が目標達成のために努力して受験に挑んでいる状況にありました。新コース設定により、武蔵野大学薬学部への進学が大きく開けたとはいえ、先輩たちの頑張りを見習うべく目標は自分の力よりワンランクステップアップした他大学理系学部への挑戦です。来春ようやく初の卒業生が輩出されます。3年間の努力の成果がどのような形で現れてくるか大変楽しみです。
※ 武蔵野大学には、2006年度より看護学部が新たに設置されました。また、2007年度には人間関係学部保育学科が児童学科に改称し、小学校教諭免許状が取得可能となります。
※ 武蔵野大学の各学部(文、人間関係、現代社会、薬、看護)には優先入学制度があるだけでなく、他大学受験との併願制度もあります。ただし薬学部への進学は、優先、併願制度とも「薬学・理系コース」のみに限定されます。
2. 2005年度、長期海外留学生が『100名』を突破しました。
高校に長期留学制度が誕生して9年。現在留学中の18名の生徒も含め、延べ利用生徒がちょうど100名となりました。この制度を利用して留学すると、留学中の単位が取得単位として認定され、出発前の学年に復学ができます。卒業生82名の主な進学先は、20名がアメリカをはじめとしたオーストラリア、カナダなど海外の大学へ進学、上智大学へ20名、獨協大学外国語学部へ8名などとなっています。また、国際理解教育への取り組みはさらに進み、2004年度には中学の修学旅行がオーストラリアとなるなど早い時期から生きた英語に触れる機会が設定されました。現在、学内でも英語に興味が深い生徒を対象とした特別講座が設定され、リーディング、ヒアリング、スピーキングなどを通じて楽しく学習の成果を上げようとの試みがなされています。
3. 2006年度、『特待生制度』を設置しました。
中学入試の第一回にのみ設定され、高校入試に見られなかった特待生制度を在校生に拡大しました。中1〜高2の生徒で一定の成績を修めた者は翌年の授業料が免除されます。これにより、生徒の学習意欲がさらに高まることが期待されます。
4. 2007年度、『普通コース』に選抜クラスが設置されます。
理系の生徒に対しては「薬学・理系コース」が設置されましたが、生徒の多くが文系への進学を目指して「普通コース」へ進みます。「普通コース」は高2から進路に応じたコース別クラス編成となり、3方向に分かれます。そのうちの2つが他大進学へ対応、1つが併設大進学に対応となっています。MJの過去3年の進路状況は四年制大学へ現役で進学した者がおよそ80%。武蔵野大学への進学は、卒業生全体のおよそ3分の1となっています。しかし、現在の制度ではどのコースに在籍していても、どのような進路を選択しても構わないということになっています。つまり、他大学進学を目標に高2からスタートしたものの、高3になって併設大への進学あるいは指定校推薦での進学に切り替えることも可能なのです。これでは、自分の実力をワンランク高める努力がなされていないことになります。そこで、「薬学・理系コース」のように一定の選抜基準を設けました。本人の希望と高1の学習状況により、「特選・文理コース」「私立文進コース」へと選抜されます。「私立文進コース」はその名の通り、私立大学文系学部に絞った学習を英国社を中心として行います。これに対し、「特選文理コース」では、国公立大学受験を視野に入れた5教科に対する学習をベースとした、私立大学受験も含めた幅広い進路選択が豊富な選択科目により可能です。また、文系と同様に理系への道も開かれています。どの時点で自分の将来への方向を確定できるかは個人差があります。「薬学・理系コース」への進学は高1の時点のこと。高2になってから本格的に理系を志す生徒も中にはいるのです。これらに対し、「総合進学コース」には選抜基準は設定されませんが、最低でも大学入試センター試験レベルの実力を確実につけることを目標として、併設大進学に限定されない幅広い進路選択を可能にしていきます。
以上のように、MJという学校のなかには、「変わらないもの」と「変わりゆくもの」がバランスを保ち共存しています。MJは今後も女子校としての使命感を持ち、社会に有為な女性を1人でも多く育てるべく進化し続けていきたいと考えています。私も1人の人間として教育活動に携われることに誇りを持ち、初心を忘れず邁進してまいりたいと思います。