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中学受験Q&A      

第11回 麻布中学校・麻布高等学校 鳥居明久先生のご紹介

せんでん[先生伝言板] 浅野中学・高等学校 小西一也先生

 

 本校では中学1年「総合」という授業で、“調べる”ことをテーマにして授業を行っています。1学期では、各教科7人の先生が、6クラスある教室を1時間ずつ巡回して、インターネットの活用、調査におけるマナー、測定の実習などを学習します。
 そして、2学期に入ると、生徒たちは実際に調べ学習を行い、その成果を3学期に発表する、という形態を取っています。
 私は「総合」の担当者になって2年目になります。私は理科の教員ですので、“調べる”というとすぐに“実験・観察”をイメージしてしまうのですが、あらゆる教科を“総合”する学習の趣旨をできるだけ活かすため、科学と社会生活の関連について考えていくような授業を目指しています。その一つが、これから紹介する「アポロ疑惑」に関わる問題提起です。
 実は、今の中高生の中で、結構多くの生徒が、人類最大の偉業であるといわれている“アポロ11号による人類の月面着陸”を信じていません。

 3年前の6月、その日、私は中学1年の生徒に、理科2分野(生物・地学)の授業で、“月”の授業を行っていました。月の自転・公転、月の満ち欠け、日食や月食について考える授業でした。
 その導入として、私は1969年にアポロ11号が月面に着陸した事を紹介しました。するとクラスの何人もの生徒が、私に対して、
「先生!人類の月面着陸はウソだったんでしょ?」
「アポロ計画は捏造だったんでしょ?」
と言ってきたのです。教室は大騒ぎになりました。

 事の発端は、当時、某局で放送されていた科学(?)番組でした。その番組の1コーナーで、「アポロ疑惑」を取り上げていたのです。
 生徒から話を聞いたところ、その番組の主張するところでは、アポロ11号が月面着陸したときの映像、写真には不自然な点が多くあり、これらは月面上で撮影されたものではなく、スタジオのセットで撮影されたもので、飛行士をピアノ線で引き上げたり、映像をスロー再生したりすることによって、あたかも月面上で軽やかに跳びまわるように見せていたというのです。

不自然とされる点

  1. 星条旗の旗がはためいている。

     下の(写真1)は、アポロの月面着陸の様子を紹介する最も有名な写真ですが、空気のない月面上では風が存在しませんから、旗がはためくはずがありません。
     この写真以外に、飛行士が旗の棒を月面に刺すときに、旗が揺れる様子が映像に残されています。

    (写真1)

  2. 星が写った写真がない。

     月面上では空気がないため、太陽が出ていても星を見ることができるはずです。しかも、大気がないので、地球で星を見るよりもはるかにきれいに見えるでしょう。しかし、月面で撮影した(写真1)を見ても、他の映像を見ても、星はどこにも見えません。
     星が写っていないことは不自然に思えます。

  3. 影の方向が違う。

     月面上では、ストロボなどは使わず、すべて太陽光を光源として撮影をしたそうです。そうすると、着陸船や飛行士たちの影はすべて平行になるはずですが、(写真2)を見るとそうはなっていません。2人の宇宙飛行士の影は、長さも方向も違います。そのことから、撮影は合成なのではないか?と疑問を持つことができます。

    (写真2)

 しかし、これらの事については、すでに結論が出ていると言っても良いようです。月面探査で撮影された映像・写真に捏造された証拠はなく、捏造疑惑には全く妥当性はない、というのが現状における一般的な見解です。
 実は、当の疑惑を放送した放送局が、「アポロ疑惑」を特集する中で、科学的に疑惑を晴らす内容の放送をしていますし、インターネットの掲示板などで膨大な議論が行われた結果、捏造の主張はことごとく論破されています。宇宙開発事業団のホームページでは、写真や映像の不自然に見える点をすべて説明するコーナーまでありました。(現在は閉鎖)

説明

  1. 星条旗の旗がはためいている。

     写真について、これははためいているのではなく、最初から旗がくしゃくしゃになっているのです。実際に、映像で星条旗を撮影したものがありますが、星条旗はくしゃくしゃのまま止まっています。
     映像の中で旗が揺れている場面もあるのですが、その映像をよく見ると、旗の下の方しか揺れていません。月面上では重力が小さいので、少し旗を振っただけで、大きく振れてしまうのです。

  2. 星が写った写真がない。

     普通のカメラで星空を撮影しようとすると、真っ暗になってしまい、星はほとんど映りません。露光時間(シャッターが開いている時間)が短いからです。星からくる光の量は非常に少ないので、シャッターをしばらく開いたままにして、フィルムに感光されるのを待たなければならないのです。
     月面上での撮影は、太陽光が出ている比較的明るい場所で行われています。飛行士や月面の写真撮影をするための露光時間は短くて済みます。逆に露光時間を長くしてしまうと、飛行士たちを撮影することができません。
     写真には写らなくとも、月面にいる宇宙飛行士たちは満天の星空を見ることができます。実際に月に行かなければ、月面上の本当の様子はわかり得ないのです。

  3. 影の方向が違う。

     影の方向が同じになるのは、地面が水平であることが条件です。同じ太陽高度でも、平地と坂とでは、影の長さも方向も違ってきます。写真ではあまり目立ちませんが、月面上は地面に起伏があり、それが影の形状に大きな影響を与えていると考えられます。

 どうでしょう。納得いただけましたか?
 不自然とされている事項は多数あり、ここですべてを紹介することはできません。ただ、そのどれもが、簡単な科学知識さえあれば、疑惑がいかに稚拙なものであるかがすぐにわかるのです。
 しかし、テレビの影響は絶大と言うべきか、多くのこども達は、アポロの月面着陸を捏造と信じ込んでしまっています。捏造と考えた方が楽しい、という心理も働いているようです。
 私は、夏休みの間に、「アポロ疑惑」についていろいろ調べて、2学期に入ってから、限られた時間の中で、これらの事について説明しました。そして、その延長線上で、テレビを見るときに注意するべき事について話をしました。それは、現在「メディアリテラシー」という語で知られているものです。
 テレビ、新聞、ラジオ、インターネット、書籍…、それらは我々が直接見たりすることのできない世界を見せてくれる重要な道具です。しかし、その道具が、ありのままの世界を見せてくれるわけではありません。メディアを製作する側の“意図”があるからです。制作者たちは自分たちの意向に合わせて、メディアで発信する内容を選択します。そしてそれが時として公益ではなく、制作者側の利益につながるものであることがあります。さらにそれが行き過ぎて、事実でないことを事実として発信してしまう場合もあることは、放送局による不祥事が時折報道されていることからもわかるでしょう。
 そうしたメディアの情報はあまりにも多く、われわれはそれに飲み込まれてしまいがちです。そうならないように、メディアの限界を承知し、その上でメディアを有効に活用できるようにする、これが私の理解する「メディアリテラシー」です。

 また、今回の経験から感じたことは、教育内容と生活・社会との関連はきわめて重要で、その事で生徒の関心は高まることがある、ということです。
 実際、このときの生徒たちの関心は非常に高く、私の側が驚くほどでした。私が見ることができなかった放送分をたまたまビデオ撮りしていた生徒が、自発的にビデオを私に貸してくれたりもしました。その生徒には本当に感謝しています。
 それ以来、私は、理科の授業においても、ただ内容を説明するだけでなく、実生活との関連したことをいかに取り入れるか、を授業における課題とすることになりました。そして、「総合」の授業において、「メディアリテラシーと科学」と題して、実生活に深く関わるメディアと科学の問題を、アポロ疑惑を題材にして考える授業を行いました。

 2学期からは、生徒による調べ学習が始まります。生徒たちは、ネタを探すところからはじめ、それを人に発表するわけですから、彼ら自身が「メディア」になるわけです。
 昨年は、「環境問題」「最新技術」「宇宙・生命」など、一般的なものから、「アニメ・まんが」を科学的に検討するものもいました。医者志望の生徒もいて、「医薬品」「医療問題」「ガン」など、難しいテーマを選ぶものもいました。
 小学校で、調べ学習をやっている生徒も多く、今年度もこちらが期待する以上の成果を見せてくれるものと期待しています。

 

浅野中学・高等学校 HP
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No.12 10/17更新

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