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中学受験Q&A      

第3回 玉川学園小学部 中許 竜宏先生のご紹介

せんでん[先生伝言板] 成城学園中学校 英語科 大貫 加容子先生

 

新年を迎える

大貫 加容子先生

 2005年、また新しい年が幕を開け、今年もまた1つ年を重ねることになる。新しい年を迎えて、気持ちも新たになったところで、私は、毎年恒例の、『今年のテーマ・目標発表会』のための準備をしている。それは、1年を振り返って、今年の自分が「もっとこうなりたい」と思うことを、その年のテーマや目標として友達同士で発表しあうというものだ。どんな小さな目標でも、漠然としたテーマでも何でもいいことにしている。例えば、「料理の腕を上げる」とか、「チャレンジ精神」などだ。ふとした時やいざという時、そのテーマや目標が頭をよぎって、「よし、やろう!」という気持ちになったりして、私にとっては意外にも効果がある。だからクラスの生徒達にも書いてもらって、学級だよりに載せたりすることもある。私の新年は、今年もそんなことをあれこれと考えながら迎えた新年だった。

 さて、2004年はいろいろなことが起こった年だったが、この年を表す漢字一文字は「災」と決められたというのをニュースで見た。その字のごとく、昨年は、日本だけでなく、世界各地で、地震や台風、津波など、自然災害が数々と起こり、自然の偉大さを思い知らさた一年でもあった。今もなお苦しんでいる方々が一日も早く立ち直られることを心から願うと共に、今自分がこうして元気でいることのありがたさを感じる。そして、東京に住んでいる私には、身の回りは、生活する上であまりにも便利なものが多く、衣食住も簡単に手に入るし、人工的な娯楽にも囲まれているので、自然というものを身の回りに意識したり、感じたりすることなく日常を過ごすことが当たり前になっていた自分に気づかされる。

 

私と山と山の不思議な力

 そんな私が自然に囲まれて自然の中で過ごす機会というのが年に少なからずある。それが成城学園の様々な学校行事だ。中でも、毎年夏休みに行われる2年生の行事『山の学校』は私にとってはとても大きなものとなっている。この『山の学校』というのは、生徒の体力に応じて、槍ヶ岳班、白馬岳半、唐松岳班に分かれて、3泊〜4泊かけて3000m級の山を歩くという行事で、プロのガイドさんにも付き添っていただくというかなり本格的な登山の学校だ。

「槍ヶ岳 燕岳」

 実は、私自身、登山というものが大の苦手で、体力的にも辛くて苦しいし、汗びっしょりになってもお風呂にも入れないという状況や、ただひたすら歩き続けるという単純な運動の連続が苦痛でならない。『山がここにあるから』という理由だけで、こんなに辛いことを自らやる人たちの気持ちがあまり理解できないでいた。

 でも、付き添いとして参加したものもう4回となるが、毎回毎回、『山の学校』が終わるころには、「楽しかったな〜」という気持ちと共に、充実感のような達成感のような、何とも言えない満たされた気持ちになるから不思議だ。嫌いなはずの登山なのに、なぜだか、よかった〜と思わせてくれる秘密が山にはあるのだ。

 

不便の中から・・・

 山の生活は、都会の日常生活とは全く違う。水はとても貴重なものなので、もちろんお風呂はないし、歯磨きもできない。寝る場所も狭いし寝心地も良くない。電気も8時か9時には止まってしまうので、懐中電灯でトイレに行く。テレビやコンポなんてない。荷物は最小限なので着替えも満足にはできない。

 そんな日常生活ではありえない不便な生活を通じて、その不便さから、普段気づかない楽しみや喜びを見つけることができる。日差しから守ってくれる木陰の心地良さ。風がそっと吹くときの気持ちよさ。水筒に入っている冷えてない水ひと口のおいしさ、その水のありがたさ。山小屋でテレビを見る代わりにおしゃべりで時間をつぶす楽しみ。そんなことは、山を経験しなければ気づくことなく過ごしていたかもしれない。



「槍ヶ岳の山小屋」

 逆に、雨が降ったり、気温が低くて寒かったり、強風が吹いたり、そういう厳しい天候になると、辛さも倍増する。天候や天気などの自然現象ばかりは自分の力ではどうにもならないのだ。そしていかに自分がどんなに恵まれた生活をしているか思い知るのだ。

 

360度自然の中で

 登山をしていると、山、空、雲、岩や花や鳥など辺り一面を自然に囲まれる。辛くても苦しくても、休憩中、ふと気付くと、とても気持ちいいと感じている。初めて槍ヶ岳の穂先(頂上)に立った時の事は今でも忘れることができない。360度山に囲まれて大自然の中にいると、自分の存在や悩みなどがすごくちっぽけなものに思えてきて、自分がどんどん小さくなってそこに溶け込んでしまうみたいな感覚になる。そしてなぜかとてもすっきりとした晴れ晴れとした気分になる。辛いことをがんばったご褒美だ。

 東京の通りいっぱいに広がる電飾のまぶしいミレナリオも、高層ビルから見えるロマンチックな夜景もこの自然の景色には絶対に敵わない。



「高山植物 チングルマ」

 

遠くに見えた槍の穂先が教えてくれること



「遠くに見える槍の穂先」

 槍ヶ岳では、尾根を縦走して頂上を目指すため、登頂の前日には、その穂先が、とてつもなく遠くの方に、とてつもなく小さく見える。あんなところまで歩いていけるのだろうかと、不安になる。そして、1日12時間も歩いて頂上に着いた時、その遠くに小さく見えた槍ヶ岳の鋭く尖がった頂上を思い出し、自分がここに立っていることが奇跡だと思える。「やった!」という気持ちになる。自分の一歩は本当に小さいのに、その一歩の繰り返しでこんなに遠くまで来られるのだなと自信満々になる。

 私は、何かにチャレンジするときや大きな壁にぶち当たったとき、度々、槍ヶ岳の小さな姿が脳裏によぎる。その槍の姿は、何か大きなことをやるには小さな一歩一歩が大事なのだということを、思い出させてくれ、小さなことひとつひとつが大きなことにつながるんだということを私自身に言い聞かせてくれるのだ。私の年始にたてた「今年の目標」にも、こうやって一歩一歩がんばって近づいていこう、と思わせてくれる。

 

ひとりじゃできないこと

 『山の学校』を楽しくさせてしまうものには、山の力以外にもある。それが周囲の人たちの存在だ。私は「こんなこと自分ひとりじゃ絶対できない!」と思う。ガイドさんやベテランの先生方が与えてくれる安心感とか、明るく楽しみ上手な生徒たちが一緒だからやっとできていることだと思う。自分が苦しいときには、同じように苦しそうな生徒の顔さえもが励みになる。学校から離れて自然に囲まれて一緒に過ごしていると自然と距離が縮まっていく感じがする。そんな中でみんな素直に感動したり、やさしくなったり、普段見られない顔が見えてくる瞬間があって、それがこの山の学校の好きなところのひとつでもある。



「槍ヶ岳 穂先へ登頂」

 山の学校を終えて、生徒に感想を書いてもらうと必ずこのようなものがある。
「今回の山の学校も、まさしくみんながいなきゃ山頂にも行けなかったと思う。」
「私は今回(山の学校)でお友達って本当に良いなぁ!!私の元気の源は友達だー!と思いました。」
「槍ヶ岳は、やはり容易な山ではなかった。死にそうな所もけっこうあったし。でも友達と常に話をしたり、しりとりなどをしながら行ったので楽しかったときもあった。」
「連れて行ってくれたガイドさんや先生、そして友達に感謝したい。」

 山の学校の中では、こうやって、人のありがたさ、友達のありがたさ、温かさをいろいろな場面でみんなが感じているのだな、ということがとても嬉しく思える。

槍ヶ岳からの絶景
「槍ヶ岳からの絶景」

 

自分の中に残るもの

 私が『山の学校』の体験からじわりと感じる満たされた気持ちは、得体の知れないものであるけれど、それをあえて追い求める気もしない。それは自分が五感で感じて、自分の中に経験としてじっと残っていくものになるのだと思う。

 私が「『山の学校』を大事にしていきたい」と強く思うのは、そういう体験ができる場というのがひとりひとりにとって、とても貴重なものだと思えるからなのだと思う。ひとつの同じ経験から見るものや、感じること、得るものなどは、十人十色、それぞれみんな違うものなのだろう。人から教わったり、本で読んだりするということとはまた違ったことが、実際に経験したことからは、頭の中とは違うどこかに残っていくことになるのだと思う。

 

大切にしたいこと

 きっと学校生活の中でも私生活の中でも、何かの経験の中から学ぶことはいろいろな場面であるのだろう。そしてそれらは、人や本などから教わったことが自分の知識として蓄積していくように、自分の経験として、自分の人生のページを彩っていくものになるのだろう。中学生という時期を、ひとりひとりに、できるだけたくさんの感覚や心を使って過ごして欲しいと思う。そして、私は、生徒達みんなが、たくさんの感覚と心を使う経験ができる場を学校生活の中で大切にしていきたい。

 

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