戦争体験を語り継ぐために 企画展『太平洋戦争で海に沈んだ民間船と海員たち』

世田谷区は、大きな犠牲と悲劇を生んだ太平洋戦争の体験や記憶を後世に伝えるとともに、戦争の悲惨さと平和の尊さを知ってもらうため、世田谷公園内に平和資料館を設置し運営を行っています。

太平洋戦争から71年が経過し、戦争体験を次の世代に語り継ぐことが難しくなっているなか、二度とこのような悲劇を繰り返さないという思いと、また、今日の日本の平和と繁栄は、戦争を体験した世代の人々が礎になって築かれているということを知って欲しいという願いが込められています。

太平洋戦争では、民間の施設や道具なども徴用され、それに関わった多くの民間人も被害を受けています。

商船などの民間船もその一つであり、物資や人員の運搬などのために徴用されましたが、その被害数が軍艦の乗組員を上回っていることは、一般にはあまり知られていません。

今回の企画展は、その「民間船」という視点から、書籍や写真、船舶の模型などを展示し、当時の民間船を取り巻く情況や軍部の動きなどが解説されています。

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企画展の展示物の多くは、「戦没した船と海員の資料館(兵庫県神戸市)」の元客員研究員 上澤祥昭氏からの寄贈によるものです。

上澤氏は、民間船を取り巻いた情況などについて、「戦争が始まってから船の動静はマル秘とされ、父の船が『何丸』で、今どこにいるかということは全くわからなかった。妹あての葉書で昭和19年9月始めには台湾にいて、いよいよ戦地に行くのだということがわかった。その時の葉書は父の遺書だと思っている。戦争遺族の中には、自分と同じ思いでいる方が大勢いる。」と語ってくれました。

企画展開催中の4月と5月には上澤氏の講演も予定されています。

平和資料館企画展「太平洋戦争で海に沈んだ民間船と海員たち」
会期:3月23日(木)~6月25日(日)
時間:9:00~17:00
場所:世田谷区立平和資料館
休館日:毎週火曜日