美術館で”キモだめし” ?! 「怖い浮世絵」展

「怖い」「恐ろしい」―恐怖は人間の普遍的な感情のひとつ。
未知なるもの、危険なもの、不気味なものなどに対して、人間は恐怖を抱き、忌み嫌い、避けようとしますが…

しかし「怖いもの見たさ」という言葉があるように、それらは多くの場合、同時に強烈な好奇心を呼び起こします。いつの時代も、小説やドラマ、映画などで、ホラーやサスペンスといったジャンルが根強い人気をもつのもこの「怖いもの見たさ」に起因するものであり…
それは時代が江戸時代にさかのぼっても同様で、怖いもの、恐ろしいものへの好奇心は旺盛だったようで、歌舞伎や小説などで怪談物が流行し、浮世絵にも怪異や妖怪が盛んに描かれていたそうです。

この夏、渋谷区にある太田記念美術館で、そんな恐怖の浮世絵を集めた「怖い浮世絵」展が開催。
幽霊・化け物・血みどろ絵をテーマに、美術館がキモだめし会場に…

…以降の文章は、「恐怖」より「怖いもの見たさ」が上回った方のみお読みください…

 

…幽霊…

280802
歌川芳幾「百もの語 魂魄」(太田記念美術館蔵)

280812
歌川国芳「四代目市川小団次の於岩ぼうこん」(太田記念美術館蔵)

幽霊は、現世に恨みや思いを残し、死後さまよっている霊魂のことで、江戸時代後期には、幽霊が歌舞伎に登場する話が流行し、それに伴い浮世絵にも幽霊が多く描かれています。

累やお岩、お菊、朝倉当吾、崇徳院など…凄まじい怨念をもって現世に現れる恐ろしい幽霊の姿が並びます…

 

…化け物…

280804
歌川国貞(三代豊国)「東駅いろは日記」(三枚続、太田記念美術館所蔵)

280805
月岡芳年「郵便報知新聞 第六百六十三号」(太田記念美術館蔵)

鬼や海坊主、大蛇、土蜘蛛、九尾の狐から化け猫まで…

歌川国芳などの浮世絵師たちは、並外れた想像力でそれらを絵画化しました。身震いするほどの大迫力で描かれた作品がある一方で、時にユーモラスな姿も見せる化け物たちが紹介されます。

 

…血みどろ絵…

280811
月岡芳年「郵便報知新聞 第五百六十五号」(太田記念美術館蔵)

280809
月岡芳年「英名二十八衆句 直助権兵衛」

280810
月岡芳年「魁題百撰相 冷泉判官隆豊」(個人蔵)

幕末から明治にかけて、月岡芳年・歌川芳幾による「英名二十八衆句」を筆頭に、血が大量に描かれた残虐な「血みどろ絵」が流行しました。芝居や講談に材を得た作品もあれば、当時起きたできごとを題材に描かれた作品などもあり、掲載をためらうぐらいの身の毛もよだつ、血にまみれた浮世絵が紹介されます。

ことしの夏は、美術館でひんやり「キモだめし」。最後まで鑑賞できるか会場で試してみてはかがでしょうか!

「怖い浮世絵」展
8月2日(火)~8月28日(日)
太田記念美術館
※トップ画像は
歌川国貞(三代豊国) 「見立三十六歌撰之内 藤原敏行朝臣 累の亡魂」(太田記念美術館蔵)